其の陸 ページ44
風呂場から出ると、五年生の皆がこちらに背を向けて並んで立っていた。
「お風呂お先。どうしたの?」
「護衛の一環。何にも知らない人が風呂場に入って行ったら大変だろ?」
彼らの視線の先には腕組みしている鹿之助さん。何だか機嫌が悪そうだ。
「ああ!私ってばお伝えするのを忘れてしまってすみません!随分お待たせしましたよね…!?」
鹿之助さんは風呂に入りに来たら私が入浴中で入れなかったんだ。
慌てて駆け寄って頭を下げる。何もおっしゃらないので恐る恐る表情を確認すると、目をカッと開き、顔を赤くしていらっしゃる。め、めちゃくちゃ怒ってる!?
「…手拭いを寄越して後ろを向いて」
「えっ、わわ!」
肩を掴んで私の向きを変え、耳の前から襟足に向かって指を滑らせると、髪を掬って手拭いで水気を取って下さった。
「人を待たせているからと言って、髪を拭くのを疎かにしてはいけない。寝巻きが濡れると風邪を引きかねないし、肌が透けてしまうだろう…」
「す、すみません」
「そんな無防備な姿を忍たまに晒さないでくれ、君の事が心配だから…」
何だか今度は五年生達が不機嫌顔のような…?
「忍たま達は、私の嫌がる事はしません。皆、余所者で特段取り柄のない私にとても親切で、仲間の一人として扱ってくれるんですよ」
「A…!」
「鹿之助さんと忍たまはどうしてだか仲が悪いですけど、私は双方のことが好きなので、少しずつ溝が埋められていくといいなぁと思います」
そう言うと、鹿之助さんは少し悲しい顔をした。
「さっきはすみません。無理に蛸を食べさせたりして。嫌でしたよね。金輪際やめろというのは、Aさんにとってかなり強い拒否ですよね」
「嫌というか、基本的に大衆の中で目立つのは恥ずかしいので…今後は普通に蛸を分けて下さい!」
「ああ、分かった!
今度会うまでに美味しい蛸料理を食べられる店を探しておくから食べに行こう!」
「はい、是非!」
「海賊さんも、Aちゃんが蛸好きだって言ったらとれたてを嫌というほど食べさせてくれるかも。優しいから」
不破が言うとAさんは顔が綻ぶ。
「兵庫水軍の皆さんって優しいんだ、少し安心」
「Aさん、兵庫水軍の海に行くのか?」
「はい。私には実家がないので、夏休み中に二週間ほど逗留させて頂くんです」
「そ、そんなの言ってくれたらいくらでも私の所に泊まらせたのに!!!!!」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時