【忍たま】君の想いは花筏【共通話５】

其の弍 ページ36

「乱子…」


「ダメったらダメです！！もしAさんに何かあったら皆に顔向けできません！！どうしてもって言うなら夏休みの終わった後に日時を設定して下さい！！」


「…こっちはそんな悠長なこと言ってられないんですよ！」


やきもきした男性が、乱太郎君の掴んでいない方の手首を掴んで引っ張った。


「わ、」


体勢を崩して前につんのめった時、夕陽が差して逆光だったものの、男性の背後から何者かが飛び掛かるように迫ってくるのが見えた。

男性は身体を翻して手甲で攻撃を受け止める。打ちつけられたものはどうやら閉じられた扇子のようだ。そして襲いかかったのは…


「鹿之助さん！？」
「デモシカさん！？」


「Aさん、この男は誰だ」


鹿之助さんが男性から目線を外さずに訊く。


「私の幼馴染のようなのですが…」


「いきなり扇子で叩いて来るなんて、危ないじゃないですか！何なんですかあなたは！？」


「下手な芝居はもういいだろう、スッポンタケ忍者」


鹿之助さんはこの男性のことを知っているようだ。
え…それよりも芝居？幼馴染なのも父母と五歳で生き別れたのも全部！？


「チッ…いつからこの計画に気付いてやがった？」


「ついさっきだが？店先で揉めているのが知り合いだったから助けに入ったら、見覚えのある忍者がいたんでね」


「ではお前も同業か。お前とこの坊主のお陰で綿密に練った連れ去り計画が台無しだ。団子屋の娘には大枚払って買収したっていうのによ」


お伝さんはスッポンタケ忍者と手を組んでいたって事！？


「待って下さい、どうして私を狙うんですか！？」


「そんな事、聞かずとも分かるだろう？お前が未来を知る人間だからだ」


私が未来人であるという事が、タソガレドキ以外にも露呈している…！


「なぜお前がそれを知っている！？」


乱太郎君が少し前に出て強気で訊く。


「忍術学園に偵察に侵入(はい)ってすぐに耳に入ったぞ。警戒心の薄いことだな」


まさか、小松田さんの包囲網を潜れる人がタソガレドキ組頭だけじゃないなんて。


「Aさん、そこに【小松田屋】と書かれた扇子屋があるでしょう。そこで匿ってもらって」


「分かりました！……ご無事で」


「勿論」


安心させるかのように口角を上げる。
私がいても足手まといだろうと思い、言われた通りに店に走る。
辺りはちょっとした騒ぎになっていて、小松田屋の店主らしき若い男性は私を手招きして下さった。

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