其の弍 ページ33
「お花はいかがですかぁ?とぉーっても綺麗なお花でぇす♡」
ちょっと鼻につく声で客寄せを開始した。
「ほら、Aさん達も!」
「…お、お花はいかがですかー」
「声が小さい!もっと色気を出して!何のために胸と尻が付いてんすか!?」
「ヒェ!!すいません無能で!!」
「仕方ない。俺達…いや私達は大声で客を寄せるので、Aさんは往来に個別に声を掛けて売り込んで下さい。男限定で!」
「わ、分かりました!」
きり丸君、お金が絡むとダメ出しが容赦ないな!?
彼のためにもせめて背負ってきた一籠分くらいは売りたいな…じゃないと後で何言われるか…!
すぐそこを通りがかった若い男性を呼び止める。
「あの、お花を買って頂けませんか?」
「(綺麗な子だなぁ!)買おう」
「本当ですか!?私の初めてのお客様です!ありがとうございます!」
「そ、そうなの?それじゃあ五本くらい貰おうかな?」
「五本も買って頂けるんですか!?とっても嬉しいです!」
売り上げた十枚の一文銭をきり丸君に渡す。
「見て、きり子ちゃん!売れたよ〜!」
「いきなり十文も!?こりゃあAさん見込みアリだぜ!ちょっと失礼しますよ!」
私の襟を帯から引っ張って胸元を緩める。
「んなななな何してるのきり子ちゃん!?」
「いい武器を持ってんすから使って下さい!」
「屈んだら見えちゃわない!?」
「谷間くらいどうってことないでしょ!」
満面の笑みで返されました。
裏でこっそりと直しつつ、花売りを再開。
そうこうしているうちにたくさんの人達が私の手から花を買ってくれ、売れることの喜びを感じる。
「綺麗ですね」
傷んでしまった葉を取り除いていると、利吉さんと同じくらいの年恰好の男性から話しかけられる。
「ありがとうございます!自慢の花なんですよ!おひとついかがですか?」
「いえ、お嬢さんがお綺麗だなと」
「えっ、いえそんな、滅相もありません…」
「花も恥じらう美しさだ。これは一輪おいくらか?」
「二文となります」
二文を受け取り、花を渡す。男性はそれを一度受け取り、私へと差し出す。
「これはあなたへ贈りましょう。髪に挿しても?」
「構いませんが…」
短く手折ると、茎を耳の辺りに差し込んで微笑んだ。
「うん、お似合いだ」
「ありがとうございます…でもどうして…」
訊いて後悔した。男性がとても切ない顔をしたからだ。
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時