其の参 ページ29
夜中、右腕に妙な違和感を覚えて目が覚める。左手で右手を確認しようとして別のものに触れた。
タカ丸君が私の右手を取って口付けていたのだ。私の左手はタカ丸君の頭に触れたようだ。
「ごめんね、起こしちゃった?」
「な、何やってるの!?」
「しー。竹谷くんが目を覚ましちゃう」
そう言うとまた腕に唇を落とす。それが何度も繰り返し、強弱をつけたり、軽く吸われたり、緩急があって思わず後ろへ身を捩る。
すると私の左肘は八左ヱ門の身体に当たった。
「何してるんですか」
背後から怒気を孕んだ声がして、背筋が凍りついた。こんなに恐ろしいのにタカ丸君は意に介さず、右手に指を絡めた。
「Aちゃんからの接吻を意味のないものにされてしまったから、僕がAちゃんの腕に意味のある接吻をしているんだよ。
ねえ、Aちゃん。今どんな感じか竹谷くんに教えてあげて?」
少し湿った唇が押し当てられ、ちゅっと控えめな音を立てて離れる。
「ひっ、擽ったい…」
びくりと肩を揺らすと、それが合図かのように左耳に八左ヱ門の唇が近づいた。
「すぐ横に俺がいるのに、タカ丸さんの接吻で感じてるのか」
「ひぁっ!?か、感じてないです!」
「嘘つけ、身体を捩ってるだろ」
「待っ、耳はダメッ!」
左手で左耳を塞ぐが、八左ヱ門の強い力で退けられる。
「塞ぐな。俺は真剣に訊いてるんだぞ」
「へーえ、Aちゃんってば耳が弱いんだ?」
右耳にタカ丸君が息を吹きかけてくる。
「なあ。俺の事は無視か?」
「無視してないからぁ!とりあえず二人とも、耳はやめてよぉ!」
「俺だって男だ。すぐ隣でそういう事始められて黙ってられるほど優しくないぞ」
まるで獣のように耳朶に噛み付く。
「や、だめっ…それ以上したら体育委員会呼ぶよ!?」
はたと二人の動きが止まる。やっぱり小平太のことは恐ろしいんだなぁ。
これでゆっくり寝られると思ったのも束の間、何者かにより戸が素早く開かれた。
「お呼びですかッ!!」
聞こえてしまったのだ、隣室の滝夜叉丸君に。八左ヱ門の顔はまだ私の耳に近く、タカ丸君は指を絡めていて、ばっちり現行犯となってしまった。
「お…お二人とも何してるんですか!?この事は、先輩に報告させて頂きますからねッ!!」
翌朝、小平太にこってり絞られる二人が目撃されたらしい。でも自業自得だからね!
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時