其の弍(八左ヱ門視点) ページ28
「そう言えば、全員一人部屋ですね」
「確かに!同室ができたみたいでワクワクするね〜!」
「でも、灯りを消したら僕からは竹谷くんが、竹谷くんからは僕が見えなくなって、Aちゃんと夫婦になった気分が味わえるね」
「なっ、何言ってるんですか!?」
「あはは、竹谷くんったら純粋だねぇ。Aちゃんなんて動じてもいないよ」
「いやぁ、タカ丸君の軽口は慣れちゃった」
慣れただって!?かつて俺が町で夫婦宣言した時は真っ赤になって恥じらっていたのに…
「あれれ…。それじゃあ次の手を考えなきゃだねぇ」
「Aは一体誰とどこまでやっているんだ…俺は心配になってきた」
「どこまでって、そんな大したことはしてない!はず!」
「じゃあ、タカ丸さんとはどこまでしたんだ?」
「フフ、接吻♡」
「わああ!?どうして言っちゃうの!?」
タカ丸さんがわざと色気たっぷりに言う。
接吻…?接吻って、あの接吻?いやまさかそんな事…
「信じられないって顔してるね?Aちゃんからしてくれたんだよ」
「あれは!タカ丸君に借りがあって、それを返すのに接吻がいいって言われたからで…!」
腹が立ってきた。接吻を求めたタカ丸さんにも、それに応えたAにもだ。
起き上がり、隣で寝そべるAの顔の横に手を付く。
「男に求められたら言われるがままするのか?」
「………は、はち……?」
「答えろ。俺が仮に今までの礼に口付けろと言ったらそうするのか?」
「…八左ヱ門が、それを求めるなら」
それを聞いて嬉しいような、悲しいような、複雑だ。
簡単に男に身体を許すなと叱責すべしという正義感と、じゃあやって貰おうっていう邪気が俺の中でせめぎ合う。
しかしここで接吻したとて、俺は後で罪悪感に苛まれる予感がしてやっと邪気を払った。
「…Aは、自らタカ丸さんに接吻しようと思い立った訳ではなく、タカ丸さんに求められたからしたんだな?」
「う、うん」
「つまり、その接吻はただの報酬であり、何の意味も含まれていないと」
接吻できないとなると、俺の気持ちの落とし所はこれしかない。
「僕とAちゃんの接吻を無意味なものにしちゃうなんて、やるねえ竹谷くん。俄然やる気が出てきたよ」
「煽ったのはタカ丸さんですよ」
タカ丸さんの瞳は一層強く弧を描き、強気な視線をこちらへ寄越した。
70人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時