其の肆(勘右衛門視点) ページ12
町では俺が普段歩くよりもやや視線を集めている印象だ。
理由は分かっている。Aだ。
片身替りの衣自体は珍しいとは言えないけど、なかなか庶民は手を出さないし、藍染は庶民的だけど、絞りは贅沢だし。色合い的には地味だけど、このパキッとした色合いが逆にAを引き立てている。
このちぐはぐなようで纏まった仕立てが妙な魅力を醸し出し、Aの美しさと相まっているんだ。
「その小袖、本当よく似合うよね。利吉さんの見立て?」
「無地が私、絞り柄が利吉さんが選んだ生地なんだけど、店の人が半分ずつ使ったら?って提案してくれてこうなった」
「なるほどね、合作だったんだ!俺すごく好きだよ」
「ありがとう!私も気に入ってる!」
うん、可愛い。笑顔が百点。
「ところで、町へは何の用事で?」
「俺達忍たまには女装の授業もあるんだけど、その時に使う小物を新調したくてね。ほら、小間物屋は男だけでは入りづらくてさぁ〜…」
「なるほどね!それで私が誘われたって訳だ!」
「そそ!本当助かりま〜す!」
「……ん?でもそれだったら女装して町に来れば良かったんじゃない?」
「あー、そこ気付いちゃった?Aと二人で町歩きしたくてさ。迷惑だった?」
「全然!むしろ町に来られて嬉しいよ。誘ってくれてありがとう!」
「こちらこそ、付き合ってくれてありがとう!」
俺が小間物屋の露店を見つけると、小間物屋の店主と目が合うのが同時だった。
「そこのお二人さん!ちょいと見ていっておくれよ!」
店主に手招きされるがまま、俺達は呉座に並べられた商品を覗き込む。
Aは色とりどりの髪紐をしげしげと眺めた。今Aの使っている髪紐は、忍たま達が髷を結う白いもの。
「髪紐が気になるかい?気持ちまけとくよ!」
「ああ、いえ、見てるだけで…」
「どれどれ。お、髪紐もいいなあ!房飾りがついていて可愛い」
「どうだい?この浅葱色のなんか、彼女の小袖にぴったり!」
「確かに。爽やかで夏っぽいし」
その浅葱色の髪紐をAの髪に宛てがう。
「Aはどう思う?」
「うん、綺麗な色だけど、勘ちゃんにはもっと山吹色くらいのが似合ってるんじゃないかなぁ?」
そう言ってまた別の髪紐を俺の頭に垂らす。
「えっ、旦那が付けるのかい?」
「あーいや!本当この子は冗談が好きで!真顔で言うもんだから困っちゃいますよー!
すいませんけどちょっと他の店も見てきます!」
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玉虫厨子(プロフ) - 澄香さん» コメントありがとうございます!需要あってよかったです!! (5月8日 6時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
澄香 - いけいけどんどん!!!出茂鹿之介の需要ありまくりです!!!! (5月8日 1時) (レス) @page50 id: b225fd04a2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あもさん» ありがとうございます💓 (12月18日 9時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
あも(プロフ) - ヤバい/// 出茂鹿・・・好きッ♡♡♡♡♡♡♡♡ (12月18日 8時) (レス) @page48 id: 769dab171c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - あーちゃんさん» ありがとうございます! (9月4日 4時) (レス) @page50 id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月21日 7時