明かされる過去の段(伊作視点) ページ5
玄関ドアを開けると、作業着姿の綾部喜八郎が立っていた。
若い男が出て来ると思わなかったのか、綾部は黙って僕の顔を刮目した。そして思いもよらぬ言葉を発した。
「……おやまあ、伊作先輩」
次は僕の方が目を見開く番だった。
「僕の事を覚えていたのか」
「いえ、たった今顔を見て思い出しました。現在進行形で芋づる式に色々思い出してます。僕の上司が元体育委員長だって事とかね」
小平太もこの地で土木をやっているのか。揃いも揃って皆伊賀が好きだな。
「伊作先輩は全て思い出してそうですね」
「うん。それで用件は?」
「勿論、Aさんに会いに来たんですよ。穴から引き揚げた時から妙な感じがしてたんです。それを突き止めたくて。まさか本当に前世で会っていたとは思いませんでしたが。
伊作先輩は、もしや今世ではAさんの親戚なんですか」
「ああ、幸運な事にね」
「Aさん今居ますか」
「今は学校の担任が来ていて、テストを解いているよ。
だから帰ってくれるかい?出来れば連絡も控えてくれると有り難いんだけど」
「なるほど、僕が過去の事を色々話すと困るんですね。伊作先輩もAさんに惚れてる一人でしたもんね。Aさんが会えないって連絡を寄越して来ましたけど、あなたの入れ知恵ですか」
「悪いけど、僕達相思相愛なんだ。他の男と会わないでって言うくらい別に普通だろう?」
「ふうん、相思相愛…。少々狡いですね。竹谷先輩を思い出さないよう繕って、それで手に入れて嬉しいですか?」
綾部の瞳がぎら、と光った。
「Aちゃんと一緒になれるなら僕はどんな嘘もつくよ。そして僕達の安寧を脅かす者は排除する。Aちゃんのストーカーとして今ここで警察を呼んだっていいんだよ」
「人の良さそうな顔して平気で嘘をつく。元忍者の性ってやつですかねえ。僕がストーカーじゃない事はAさんが証明してくれますよ。僕の事も名乗らずとも喜八郎と呼んだ。遅かれ早かれ記憶は戻るでしょう」
僕を押し退けて玄関に入る。
「ちょっと!不法侵入!」
「テスト、もう終わったんじゃないですか?中が騒がしいですけど」
リビングからは文次郎とAちゃんの言い争う声が玄関まで聞こえてきていた。
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玉虫厨子(プロフ) - ゆずぎょうざさん» 拙作で泣いて頂きありがとうございます!竹谷ルートはシリアス多めでしたね、、ご心配をお掛けしました😂潮江ルートの方もどうぞ宜しくお願いいたします🙇✨ (4月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぎょうざ - 完結お疲れ様です!とても感動して泣いちゃいました!途中シリアスで最後までハラハラしていましたがハッピーエンドで良かったです😭潮江ルートを今から読みます!これからも頑張ってください🙇 (4月21日 7時) (レス) id: 03a920b2e2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» 応援ありがとうございます!竹谷ルート楽しんで頂けて良かったです✨潮江ルートも読んで頂けるとのことなのでより一層頑張りますね! (4月19日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 竹谷ルート完結お疲れ様でした! 本編に続き竹谷ルートのお話も素敵ですごく魅力されました!次の潮江ルートも楽しみに読ませて頂きますね、これからも応援しています! (4月19日 7時) (レス) id: 08d8a5b782 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» ありがとうございます!不安にさせてしまいすみませんでした🙇シリアス書くの楽しかったのでまた不安にさせてしまうかもしれませんが次作も宜しくお願いいたします! (4月8日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年3月28日 9時