其の参 ページ28
「気遣いありがとう。ところが俺はこの通り、全っ然平気だから!!」
いつぞやに見た、初夏の太陽のような満面の笑みで左手は腰に当て、右手でピースサインをこちらに向けた。
「そうなの?じゃあ、どうして一週間も会いに来なかったの…?」
「記憶が波のように押し寄せて来てさ、時系列がバラバラだったから一つずつ書き出して整理してたんだ!Aに会うのはちゃんと全部整理できてからの方がいいかなと思ってさ!」
「フラッシュバックして辛くなったりとかは…」
「無い無い!受け入れられなかった訳じゃないよ!」
俺に会えなくて寂しかった?と聞いてくる八左ヱ門を睨んでやれば、彼は冗談だよと慌てて繕った。
「むしろAを帰しておいて心底良かったって思ってる。俺、前世ではちょうど今くらいの年齢で死んでしまったから、一緒になってたら未来人のAや生まれてきた子供を路頭に迷わせることになってた。
いやー、しかし夢の中のAと一緒に居た上背のある男が来世の自分だとは思わなかったなー!本当、Aを殺した前世の俺を褒めてやりたい!」
私を手に掛けたことについてかなりポジティブに受け止めているようで、私は拍子抜けした。
「──なあ、お互い死んだら一緒になろうって約束したの覚えてる?」
「うん、覚えてるけど…」
「その約束を守る時が来たと思わない!?」
「え?」
「だって俺達、あれから
八左ヱ門はニカッと笑った。
確かにそうだ。私は死んで令和の世に時間移動をしたし、彼は死んで生まれ変わった。
八左ヱ門は咳払いを一つすると、右手の汗をジーンズのお尻で拭ってこちらへ差し出した。
「俺と、結婚を前提にお付き合いして下さい」
蝉が鳴いて煩い筈なのに、私の耳には八左ヱ門の言葉しか入って来ない。
差し出された手を両手で力一杯握ってやった。
「いててっ!?」
「ばか左ヱ門。私がどんな思いで今日ここに来たと思ってるの!?八左ヱ門と決別するためだよ!?」
「うん…」
「この大学に八左ヱ門の植えた木があるって聞いたから一生懸命勉強してやっと合格して!」
「うん」
「毎日この木の下で八左ヱ門に思いを馳せてたら本人に悪戯はやめろとか言われて!!」
「うん」
「なんかいっぱい絡んできて忘れさせてもくれない!かと言ってオカ美の歯を渡したって過去を思い出す訳でもない!」
「うん」
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玉虫厨子(プロフ) - ゆずぎょうざさん» 拙作で泣いて頂きありがとうございます!竹谷ルートはシリアス多めでしたね、、ご心配をお掛けしました😂潮江ルートの方もどうぞ宜しくお願いいたします🙇✨ (4月21日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
ゆずぎょうざ - 完結お疲れ様です!とても感動して泣いちゃいました!途中シリアスで最後までハラハラしていましたがハッピーエンドで良かったです😭潮江ルートを今から読みます!これからも頑張ってください🙇 (4月21日 7時) (レス) id: 03a920b2e2 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» 応援ありがとうございます!竹谷ルート楽しんで頂けて良かったです✨潮江ルートも読んで頂けるとのことなのでより一層頑張りますね! (4月19日 8時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 竹谷ルート完結お疲れ様でした! 本編に続き竹谷ルートのお話も素敵ですごく魅力されました!次の潮江ルートも楽しみに読ませて頂きますね、これからも応援しています! (4月19日 7時) (レス) id: 08d8a5b782 (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» ありがとうございます!不安にさせてしまいすみませんでした🙇シリアス書くの楽しかったのでまた不安にさせてしまうかもしれませんが次作も宜しくお願いいたします! (4月8日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年3月28日 9時