【忍たま】君の想いは花筏【竹谷八左ヱ門ルート４】

其の伍（八左ヱ門視点） ページ21

Aちゃんと浅からぬ関係にあったのに全く記憶が無いのが不可解だが、俺はAちゃんとなら記憶があろうがなかろうが関係を深めていけると確信している。
女性経験は無いし根拠も無い。だが不思議と相性は悪くない気がするんだ。

しかし俺が“恋人と半分こするのが夢”と伝えた上で本当にキットカット食べてくれるとは思ってなかったな。きっと恋人じゃないという理由で頑なに拒否か無視されるんだろうと思っていたのに。
しかもあの食べ方！俺の右手に両手を添えて手の中から食べてくれる姿はまるで…


「小動物…！！」


リスかな！？前世リスなのかな！？
可愛さに悶えながら講義室へ戻る。するとAちゃんの隣、つまりさっきまで俺の座っていた場所に金髪の男が座っていた。


(え。誰だアレ…)


「ふうん…。それじゃあ、僕にもチャンスが巡って来たって事かな？」


男が言った。
そいつはまるで鷹が獲物を見つけた時のように瞳をぎらつかせ、Aちゃんの顔を覗き込む。


「な、何のチャンス…？」


「え〜？分かってるくせに言わせるの？Aちゃんの欲しがり」


髪を手櫛で梳いて、あろうことかその一房にキスをした。その時一瞬俺とそいつの視線がかち合って、奴は不敵な笑みを見せた。


「フフ、今日は楽しい一日になりそうだね♡」


何だと〜〜〜！？
たくさん話してAちゃんと楽しい一日を過ごすのは俺なんですけど！！
俺はその余裕綽々な笑みを湛えた男の言動に頭に血が上りそうだった。あれは男からの宣戦布告だ。あの目、いつでも掠め取ってやるぞと言われているような気がした。

Aちゃんは席を立って移動する金髪の男を視線で追っていて、俺が近くに戻ってきた事にも気がついていないようだった。


「あれ、誰！？」


「わ！戻って来てたんですか！？」


俺が焦燥感に駆られながら訊ねると、背中を跳ねさせた。


「なあ、誰なんだ！？」


「ええと……彼は昔の知り合いで」


ただの知り合いで髪にキスなんてしないよな？


「元カレとか…！？」


「いえ。彼はやり過ぎなところあるんですよね。でも穏やかで優しい人ですよ」


そこで薬学科の撮影が始まるとアナウンスされた。


「行きましょう、竹谷先輩」

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