其の弐 ページ9
「これによれば、時間移動の鍵は落とし穴に落ちる事ではなかった。この時代での不慮の死が、未来へと繋がる」
「……はあ?死ぬ?誰がですか」
兵助が怒気を孕んだ声色で訊ねる。怖いよ!相手は先輩だよ!?
「無論、Aがだ。Aは未来で一度死んでこの時代にやって来たと思われる。一定の法則はあるようだが、こちらの時代でAが死ねば、生きて未来に戻れる可能性がある」
「……つまり、私が連れ回してAが消えた時、落とし穴に落ちて死んだという事か」
「そういう事だ。忍たまが落ちて打撲で済みそうな穴でも、一般人なら咄嗟の受け身が取れず致命傷になることがある」
「だが未来は未来でもたった半日だ。日付をたった一年進めるのに七百三十回死ななければならない。Aの居た時代まで何十万回もある。一体何十年掛かる?そんなに死んでいられないだろう」
小平太の言い分は尤もだ。
そもそも私は八左ヱ門と離れるつもりなどないから、会合など開かず私に報告してくれるだけで構わなかったのに。
「移動する時間の関係についてはこと詳細に書かれている。雷蔵」
「…はい。とても長いので抜粋して読み上げます…。
【小生が筆を取ったのは人生三巡目の晩年である。
一巡目、未来からやって来た小生はある日流れ矢を受け数刻後に死亡するが、およそ百年後の世に記憶を有したまま時間移動。その十数年後に老衰にて死亡。
二巡目、その死亡から数日後に生を受ける。生まれ落ちたその時より前世の記憶と知識を有していた。齢四十の時に大地震により崩れ落ちた家屋の下敷きになり、二日ほどもがいたが助けが来ず意識を失った。死んだと思われたが瓦礫の外で目覚めた。足は潰れた筈が傷一つ無かった。誰が助け出したかは分からない。村人全員に聞いて回ったが誰も小生を助けたという者は居なかった。数年後に労咳にて死亡。
三巡目、労咳での死後数日以内にまたも記憶を有したまま園田村にて生まれる。未来の土木技術を活用し村の治水灌漑に尽力。その努力を買われて乙名となる。現在、持病の悪化により死期を悟る。恐らく一年以内に死亡し、また直ぐに生まれ変わるだろう】」
「いやちょっと待て。それで抜粋後の文章なのか!?」
私も思った。長過ぎだしややこし過ぎない?どうしよう、自分に関する事柄なのに全然頭に入ってこない!
「はい。元が膨大ですので…何せ、三人分の人生の記録ですから」
37人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー!一気読みありがとうございます! 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました!どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる!笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです!どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも!!めちゃおもろいです! (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年2月2日 21時