其の陸（八左ヱ門視点） ページ6
しゃがんでいたAが動揺して尻餅をついた。
「く、口付け以外に何かご所望で……？」
「言っていいの？」
「取り敢えず聞くだけ…！」
「……口吸いがしたい」
「口、吸い……」
「でも、Aがまだ嫌だって言うなら我慢する。してもいいなら口付けした時、唇の力を抜いて」
「ヒェ……」
そのうち卒倒するんじゃないかと言うほど耳まで真っ赤になって顔を覆う彼女を見ていると、どうも雄としての本能が覚醒しそうだ。
両手をそっとどかしてもう一度口付けをする。Aのその小さく形の良い唇の緊張が解け、感触がふわりと柔らかくなった。
俺は次の段階に進めることに心逸りそうになった。直ぐにでも舌を差し込んでやりたかったが、いきなりだとAが驚いてしまうだろうから徐々に進めていくべきだ。薄く口を開いて、舌先でAの唇を舐める。
びくりと一瞬力んでしまったが、今度は唇が柔らかくなると同時におずおずと俺の首に両腕が回された。
(そんな可愛いことされたら、歯止めが効かなくなるぞ…！)
こちらもそれに合わせて抱き締め直し、舌を差し込──…
「よう、お二人さん」
突然頭上から声が降ってきて、俺達は弾けるように離れた。よく見知った友の顔がこちらを見下ろしている。
「三郎！？」
「ご名答！もうAは私と雷蔵を絶対間違えないなぁ！感心感心」
Aとの口付けを見られた！よりによって三郎とは……。あああ最悪だ、これは明日からネタにされるぞ……。
「何しに来たんだよ」
「八が上手いことやってるか心配でこっそり見に来たんだが杞憂だったな。虫の餌より先に
「なっ！？おまっ、なんて事をッ！？」
これで気まずくなったら口吸いまでの道程がまた遠のくじゃないか！？
当の三郎はニタニタと気色悪い笑みを浮かべた。人の気も知らないで！
「そんなに怒るなって！Aを見習えよ。全く取り乱してないぞ？」
はっとしてAの方を見るが、首を傾げてぽかんとしていた。
「ややって何？」
「知らないのか？ならば私が作り方を実践して教えてやろう」
「三郎！本当に怒るぞ！」
「はっはっは、ちょっとした冗談じゃないか。お前にAを譲ってやったんだからこれくらい許せ」
面白半分でちょっかいかけていたものと思っていたが、三郎もAのことを好いていたのか？
「それからA。鍋の空焚きは良くないぞ。言いたかったのはそれだけだ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 37人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
