イナゴを調理の段 ページ49
「Aちゃん。イナゴを捕まえて来たって言ってたわよね。そろそろいい頃合いなんじゃないかしら」
食堂のおばちゃんは人が少ない時を見計らって、小声で耳打ちした。
「そろそろっておばちゃん、今作って当日までに料理が傷んだりしませんか？」
「イナゴを炊くのに醤油とお砂糖をたくさん使うから日持ちするのよ。そりゃ勿論前日や当日に作るに越したことないんだけど、直前はAちゃんもおさんどんなんかせずに過ごしたいかと思って」
確かに当日は送別会に来てくださった方々にお礼とお別れを言うのに忙しいだろうから難しいし、早めに作ってイナゴの事を考える時間から解放されたい。
「お願いします！作り方を教えて下さい！」
「ええ、いいわよ！それじゃあイナゴを持って来てくれる？」
そう言われて初めて一年長屋へやって来た。上級生長屋とは違って、わいわいと楽しい声が聞こえる。
ちょうど庄左ヱ門君の部屋の前を通りかかった時、その声は一層大きくなった。
「えー、それじゃあ送別会の日にAさんに何を渡すかだけど…」
不意に自分の名前が聞こえて思わず立ち止まってしまった。
「はい！一人一本綺麗な花を摘んできて花束にするのはどう？」
もしかしてサプライズの話し合い…！？なんていい子達なの…私、そんなのされたら号泣必至だよ〜！というか既に泣きそうだよ〜！
「……待って。誰かの気配がする」
庄左ヱ門君の声で皆の話し声がピタリと止んだ。これはまずいと思い、咄嗟に縁側の下に潜り込んで隠れた。忍者みたい！と少しワクワクした。
しかし部屋の戸が開く音がして、庄左ヱ門君がこちらを覗き込んだ為、ばっちり目が合ってしまった。忍者はこんな見つかりやすい所へは隠れないか…。
「……あはは…コンニチハ……」
「………。」
「庄左ヱ門、誰か居たの？」
「…いや、僕の思い過ごしだったみたいだ。でも人に聞かれないよう、続きは夜に持ち越しにしよう！」
庄左ヱ門君は、私の存在を皆に伝えることはしなかった。
話し合いが解散になり、やがてそれぞれが部屋へ戻ったことを確認した彼は地面に降りて私に手を差し伸べた。
「もういいですよ。大丈夫ですか？」
「うん大丈夫、ありがとう…！」
ひええ…対応が大人だし男前だし！！将来モテちゃうね！！
「ぎゃ！？Aさん！？」
庄左ヱ門君の同室の伊助君が私を見つけて眉を顰めた。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
