其の参（八左ヱ門視点） ページ44
「ほら！どうだ！？」
「わあ……！」
俺が連れて来たのは裏山の丘。
ひらけた場所に無数に咲く白や薄紅色の花々、舞うように群がる蝶。忍術学園の鐘楼が見えている。
「凄い！凄い！可愛らしい蝶も綺麗な花もいっぱい！忍術学園が見えるー！」
目を輝かせて、くるくる回って。この景色を全身で楽しんでいる。それはまるでAと初めて町へ行った時のようだった。
「ほら、八左ヱ門も早くー！」
Aが俺の手首を掴んで後ろ向きに歩き出す。
「そんなはしゃいでると転けるぞ？」
「うわぁ！？」
ほら、言わんこっちゃない。俺の手を掴んだまま後ろに倒れ込む。勿論それを阻止することくらい朝飯前だが、俺はわざと身を委ね、押し倒すような形で倒れた。
「ごめん八左ヱ門！！大丈夫！？」
「大丈夫だよ」
二人の時間はあと僅かで終わる。俺自ら終わらせる。帰らせるべき、という基本的な考えは変わらない。
俺達はAという一人の人間を失う。Aは恋仲の俺と忍たま、くのたま、先生方、プロ忍の方々など多くの人との繋がりを失う。きっと死ぬほど辛くて不安で泣き出したい筈なのに、気丈に振る舞っている。帰れと言った俺とも最後の日の朝まで恋仲でいたいと言ってくれている。
「八……ん」
口付けを落とすと、ほんのり顔を赤らめたAが背中に手を回し、ぐっと引いたかと思うと俺の視界が反転した。
Aが上になったのだ。
「そんな事されたら、したくなっちゃうな」
「えっ、な、何を…！」
「口付け」
口付けかい……なんて少し期待外れに思った十四歳の男の俺がいたが、そんな口付けすら真珠の一粒一粒のように貴重なのだ。
Aの軽くて短い口付けが幾度も雨のように降ってきて、もっと深く繋がりたいという思いがむくむくと膨れ上がっては掻き消した。
そんな時、誰かが「おーい」と呼ぶ声がして俺達は顔を上げた。滝夜叉丸が人を捜していたのだ。
「滝！」
「ウワッ！？Aさんと竹谷先輩！？」
とても嫌なものを見つけてしまった、という顔で驚く滝夜叉丸。あれはAが綾部と滝夜叉丸を医務室で抱き締めた以来の顔だ。という事は俺も今まさにその時見せた牽制の顔を滝夜叉丸に無意識に見せていたに違いない。
「すみません、逢瀬の邪魔をするつもりは無かったんですけど、三之助がいなくなったので捜していたところ、こちらから人の気配がしたので…」
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
