其の弐 ページ43
「えっと待ってくれ。明日俺と蝶を見に行くと言ったか？聞き間違いじゃないよな！？」
「うん。もしかして明日委員会の当番だった？非番でも生物小屋には毎日顔出してるし難しいか！」
「っい、行く！！絶対連れて行く！！！この時期、蝶がたくさん集まる丘があるんだ！！」
興奮を通り越して必死な様子の八左ヱ門に両手をがっしり握られた。明日は絶対体調崩せないなぁ。
「じゃあ明日、その丘に行くの楽しみにしているね」
「うん……それでさ、出来たら二人きりで行きたいんだけど…！」
「ふふ。もとよりそのつもりだよ！」
「そっか、良かった！それとさ、もう一つお願いがあるんだけど……明日、黄色い小袖を着てくれないか？」
黄色い小袖。利吉さんのお下がりで貰った小袖のうちの一枚だ。
「あれは利吉さんや三郎に似合わないと酷評されたものなんだけど…」
「知ってる。けど俺はあれが一番好きだから、着て欲しいんだ」
「そうなんだ。分かった、明日はそれを着るね」
「ありがとう！はぁ、Aと虫の鑑賞、しかもAから誘って貰えるなんて……夢じゃないよな？」
「虫は虫でも蝶は好きだよ！刺したり噛んだりしないし黒目がちで可愛いし。至近距離で見たり触ったりは少し怖いけどね」
「十分だよ。全部の虫を嫌いな訳じゃなくて良かった」
「ふふ。てんとう虫も好きだよ」
「そうなの！？俺も好き！！健気に高いところへ登っていく姿が可愛いよなあ！！他には！？」
その日は虫の話で夜が更けていった。
部屋に戻った私は引き出しから黄色の小袖を取り出した。
八左ヱ門と初めて町へ行った時に着ていたのがこの小袖だ。私としても懐かしいし、大切な思い出が詰まっている。
二人で出掛けるのはこれで最後かもしれない。
蝶だけじゃなくて八左ヱ門の姿をしっかりと目に焼き付けておかないと。スマホやチェキみたいなものでもあれば良かったのに。それならずっとその姿を覚えていられるのに。
「俺はあれが一番好きだから」
ふと先程言われた言葉が思い出された。知らなかった。知ってたらもっと黄色い小袖着ていたのになぁ。
きっと、まだ知らない事たくさんあったんだろうなぁ。髪フサフサのお父上やお兄さん、おじいさんに会ってみたかったな……きっと八左ヱ門みたいに優しく朗らかなんだろうな。
ご家族や忍たまの皆がついているから、私が帰った後も大丈夫だよね。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
