其の弐(孫兵視点) ページ36
「Aさーんっ!」
放課後、Aさんは約束の時間より前に正門前で待っていた。
三治郎が呼ぶと、彼女はこちらに気付いて手を振って迎えた。
「すみません、お待たせしましたか!?」
「全然待ってないし、私の都合で付き合わせるんだからそんな事気にしなくていいよ!!
一平君と孫次郎君は当番?」
「そうです。そういえば、竹谷先輩には秋の蝶を採集に行くと伝えてますので、そういうことにしておいて下さい」
そう伝えた時の竹谷先輩、動揺が凄まじかったな。あれ絶対行きたかったんだろうな。
そりゃあそうだ。残り僅か一週間でAさんと再び竹谷先輩と虫取りなんて機会はもう実現しないかもしれないし。
「君達宿題出されたりしてるよね?影響無いように早く行って早く帰って来よう!」
「あ、ちょっと待って下さい。実はもう一人来るんです」
「もう一人?まさか八左ヱ門じゃないよね?ま、ばれてしまったって別に良いんだけど」
「違いますよ」
虫料理で驚かせる為とは言え、竹谷先輩を差し置いて恋仲のAさんと虫取りを楽しむのは少し申し訳なくなり、急遽僕も一策を捻り出したのだ。
「わ〜!もう皆さんお揃いですね!遅くなってすみません!」
それは乱太郎を連れて行くこと。
乱太郎はとにかく絵が上手い。虫取りするAさんの様子を乱太郎に描かせて、竹谷先輩に贈ってはどうかと考えたのだ。乱太郎は二つ返事で快く引き受けてくれた。
「乱太郎君も助っ人で来てくれるの!?」
「えっ!?あ、はいそうなんです!私もイナゴを捕るお手伝いしますね!」
因みにAさんには乱太郎が絵を描くことは伏せておこうと思う。自然なありのままのAさんが描き残せたらそれが一番いい。
「さ、行きましょう!」
「先輩、今日はどの辺りで虫取りしますか?」
「杭瀬村の辺りまで行こうと思う」
「大木雅之助先生の所ですか?」
「うん。大木先生は畑をやっておられるし、水田も近いからきっと捕れる」
僕の知っている限り、一番安全に虫取り出来る場所は大木先生の畑だ。何せ大木先生は忍術学園の元教師なのだから。急なことで約束も何も取り付けていないが、大抵野良仕事をされているから大丈夫だろう。
大木先生が飼っておられる山羊のケロちゃんに会うのも楽しみだ。
しばらく歩いてきたところで、大木先生の広大な畑が見えてきた。しかし大木先生は姿が見えず、近くにある家に声を掛けてみても返事はなかった。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー!一気読みありがとうございます! 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました!どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる!笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです!どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも!!めちゃおもろいです! (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年2月2日 21時