其の弐 ページ32
「謝らないで。元を辿れば私のせい──…うん。なんか少しだけ思い出したな。私のせいっ連呼してたのを」
「何度でも言いますが、Aさんのせいではありません」
「それじゃあ喜八郎のせいでもないよ。たぶん先輩に怒られてしまったよね。喜八郎が私の為を考えて行動したこと、分かってるから」
ずび、と鼻をすすりだす彼を抱き寄せた。
「Aさん…！？竹谷先輩に怒られますよ」
「八左ヱ門はこれくらいでは怒らないよ」
「……いや、とっても睨まれてます…」
「滝も。きっと同室だから喜八郎と私のことも探し回ってくれたんだよね、ありがとう。おいで、抱き締めさせて」
「しかし、竹谷先輩のいらっしゃる手前そんな…」
「優しいから許してくれるよ」
「いえ、鋭い視線で牽制されてます……うわっ！」
右手で喜八郎、左手で滝を抱き締めた。これが両手に蜂蜜ってやつかね？
「私は嫌々帰る訳じゃないし、強要もされていないからね。でも気持ちは嬉しいよ。ありがとう」
「……はい。すみません。竹谷先輩も、すみませんでした」
「もういいよ。でもそういうのは俺の前でしないで欲しいんだけどな！？」
「やだなぁ、友愛的な抱擁だよ？」
八左ヱ門にジトッとした視線で見られて居心地悪そうな二人を解放した。
「仙蔵、送別会はいつになるの？」
「二週間後くらいでどうだろうか。手紙が書け次第遠方から送ろうと思っている」
「二週間後か……。私の帰るのはその翌朝でもいい？余韻を感じたままさよならしたい」
「お前が望む通りにしよう」
人生で一番短く感じる二週間になるだろうなあ。
「ところで、私が錯乱しているうちに頸を斬っていた方が皆にとっては都合が良かったでしょ。どうして止めたの？」
「伊作が気絶させてたろ」
「えっ？僕は長次が縄鏢で動きを封じたからそうしたんだけど」
「もそ…竹谷が“やめろ”と叫んだからやめさせた」
視線が八左ヱ門に注がれた。
「今思えば、Aも恐怖を感じずに死ねたかもしれないよな。でも錯乱状態のままAと別れたくなくてつい制止する言葉が口をついて…。俺の勝手でごめんな…」
私も同じ気持ちだ。悔いを残さないようにちゃんとお別れしてから未来へ帰りたい。
「ふふ。そのお陰で二週間長く一緒に居られるね！」
「…うん、そうだな」
八左ヱ門は眉を下げたまま微笑みを返してくれた。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
