其の捌（滝夜叉丸視点） ページ30
「竹谷、Aはどうしたんだ」
潮江先輩が駆け寄って訊ねる。
「分かりません。僕の声が届いていないようで、視線も合わないし、ずっと“私のせい”と……」
「まさか、気が触れたのか…！？」
食満先輩の言葉に伊作先輩は厳しい表情を崩さず、キッと強く喜八郎を
「綾部。医務室の薬草が持ち出された形跡があったけど、Aちゃんに使ったね？」
「……、はい」
「何を使ったの」
「園田村の痛み止めです」
「あれは燻した煙を多量に吸うと睡眠薬のような効果が出る。それを利用して小松田さんに見つかることなく連れ出したんだろうが、稀に錯乱状態が見られることもある。お前が無闇に使ったせいでAちゃんは今苦しんでいる」
「ッ、すみません…！」
「ちょ、ちょっと待って下さい伊作先輩！！何ですか錯乱状態って！！Aは、Aは治りますよね！？」
「落ち着いて竹谷！薬が抜ければ戻る筈だ。あと二刻程はこんな状態が続くかもしれないけれど」
「……よ、良かったぁ…」
竹谷先輩はへなへなと両手と臀部を地面についてAさんの前に座り込んだ。するとずっと呟いていたAさんの独り言がピタリと止んだ。
そしてAさんの右手が徐に竹谷先輩の方へ伸びる。それに応えるように先輩もAさんの肩を強く掴んだ。
「A！分かるか！？」
「…………。」
しかしAさんの伸ばした手は先輩を求めていた訳ではなく、先輩の差していた忍刀だった。竹谷先輩は滅多に刀を差すことはないけれど、学園を出る前に立花先輩が喜八郎対策として差すよう勧めたものだ。
「え、あ、ちょっ！？」
鞘の付いたまま袴から持っていかれそうになり、慌てた竹谷先輩は左手で鞘を掴むが、その拍子に鯉口が切れてしまい、結果的に抜刀を手助けしてしまった。
「こらA！危ないから返せ！」
そうは言っても錯乱状態。剥き出しになった刀がAさんの手に渡った以上、無闇に近付けない。取り返そうとするとぶんぶんと滅茶苦茶に振り回してきて危険だ。
「死ぬ。自分で、死なないと」
その呟きと共に刀は躊躇いもなく自身の頸へと当てがわれる。
「やめろォーッ！！！」
竹谷先輩が叫んだ。すると間一髪のところで中在家先輩の縄鏢が右手首に絡み付いて動きを制限し、その隙に伊作先輩が背後に回って頸に手刀を入れた。
「ア、」
短く声を上げて気を失ったところを伊作先輩が支えた。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
