其の漆（滝夜叉丸視点） ページ29
「おやまあ、皆さんお早いお着きで。今からそちらへ向かおうとしていたんですが手間が省けました」
「Aッ！」
竹谷先輩が一瞬で空堀に降りて登って、あっという間にあちら側へ到達した。他の先輩方と私もその後に続いた。
「
「ああ、あ、あ、わた、わたしの、せい」
竹谷先輩が話し掛けても聞こえていないかのようにぶつぶつと唱えている。
「綾部。どうしてAを無断で連れ去ったりしたんだ」
七松先輩が静かに問いかける。
「Aさんが殺されようとしているのを指を咥えて見てるなんて僕には到底出来なかったんです。殺さないと約束して頂くまで此処で身柄を預かるつもりでした」
七松先輩の視線にあっけらかんとしながら淡々と話す喜八郎。
「七松先輩もこちら側の人間ですよね？昨日の会合であなたは竹谷先輩のお話に静かに怒りを感じておられたでしょう」
「確かに私は怒りを感じた。だが堪えた。Aが選んだ竹谷という男が下した決断だ。そしてAも受け入れた。外野がとやかく言えることではない」
「そうせざるを得なかったんですよ！Aさんは優しいからあの場で竹谷先輩や中在家先輩の提案を蹴ることが出来なかったんだ！！それを受け入れた！？馬鹿言わないで下さいよ！！強制的に帰る判断をさせられたんだ！！」
「Aの中でそういう気持ちが働いたとて、それを含めてAの判断だ」
「考えてもみて下さいよ！！Aさんは忍術学園に世話になっている身です！学園側から帰れと言われたらそれ以上居られないでしょう！？こんなのAさんの意思とは到底認められない！！
僕にも作法委員会として責任がある！！送別会なんて予定されたら“やっぱり帰りたくない”なんて言い出せなくなる！！」
私は喜八郎がしたことの善悪は置いておいて、奴の言い分はよく理解出来た。私もAさんが無理をして賛同したように見えたからだ。恐らく、下級生達にもそう見えたと思う。
「それで、お前の要求は？」
「Aさんを殺さないと約束して下さい。或いは、きちんと彼女が本音を言える環境において再度意向を確認して下さい」
「いいだろう。Aにはもう一度気持ちをじっくりと聞く時間を設けよう」
喜八郎と先輩方の一応の落とし所が見つかり、些か緊張は解れた。しかし竹谷先輩と伊作先輩はAさんを囲み、深刻な表情を浮かべていた。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
