喜八郎の心境の段(仙蔵視点) ページ23
「どうぞ」
一緒に行くと言って聞かない喜八郎を連れてAの部屋を訪れた。
中から男の話し声が聞こえたが、やはり竹谷だった。割と普通に話していたようで些か安堵した。
「話の邪魔をして悪い。急ぎ意向を確認したいことがあったのでな。近いうちに送別会を開こうと思っているんだが、どうかな」
「送別会?」
「ああ。笑顔で過ごしたいと言っていただろう?それを受けて我々に何が出来るか作法委員会で話し合ったんだが、利吉さんなど此処での知り合いを皆呼んで会食してはどうかという話になったんだ」
「ふふっ、葬式の間違いじゃないの」
「笑えん冗談を言うな……」
「ごめんごめん、反応に困るよね。お世話になった方々にきちんとさよならが言えるの嬉しいなぁ。私のために企画してくれてありがとう」
「立花先輩、やはりデモシカはやめておきましょう。空気読めなさそうですし、僕嫌いなんですよね。本当はこの人も呼びたくないですけど」
喜八郎が竹谷を睨みつける。
「…喜八郎、余計な言動をしないと言うから連れて来たんだぞ」
そこでふとAが喜八郎の右の手の甲が赤くなっているのを目敏く見つけて指を差す。
「…ねえ、それどうしたの」
「………。」
「八左ヱ門を殴ったのって、喜八郎なの?」
「違う、俺と綾部は何も無いよ!」
竹谷が否定する。
察しの通り、五、六年の話し合いを終えた後、部屋を出ると委員会に向かわせた筈の喜八郎が待ち構えており、竹谷の頬を殴ったのだ。
竹谷は敵意を持ちながら距離を詰める喜八郎に構えもせず、全く避ける素振りも見せなかった。今も綾部を庇おうとしているのか、竹谷は否定する。しかしその否定が喜八郎の神経を逆撫でしたようだ。
「ええそうですよ、僕が殴りました。Aさんを傷つけたんだから因果応報ですよ」
その言葉に今度はAが怒りを露わにする。
「私は頼んでない!因果応報って言うなら今ここで私に殴られても文句言えないよね!?」
「A!俺はいいから!」
「一体その人のどこが良いんですか?髷の中で生物を越冬させるほどの変人で身なりは無頓着、挙句Aさんの事を自ら殺すとか言いだす精神イカれ野郎ですよ」
「こら喜八郎!慎まんか!」
竹谷を馬鹿にされたAは拳を振り上げると、喜八郎はきゅっと目を瞑って衝撃に備えた。しかしAが殴ったのはA自身の頬だった。
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー!一気読みありがとうございます! 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました!どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる!笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです!どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます! (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも!!めちゃおもろいです! (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2024年2月2日 21時