交わらない気持ちの段 ページ18
「A、入ってもいいか」
八左ヱ門が部屋を尋ねて来た。私は居住まいを正し、手拭いで目を一度押さえてから深呼吸をした。
「どうぞ」
神妙な面持ちで入って来た八左ヱ門のその頰が赤く腫れている。
「待って、その顔どうしたの！？」
「赤くなってるか？ちょっとな、会合の後に殴られたんだ」
「誰に！？」
「それはまあいいじゃないか」
「よくない！医務室行こう！」
「打撲は日にち薬だから。それに、こんな怪我より俺に突き放されたAの心の方がずっと傷ついて痛いんだって言われた。その通りだと思う」
「……いや、別に…そんなこと」
「酷いことを言っている自覚はある。俺の事、恨んでいるか」
恨んではいないが、思うところはたくさんある。
「未来人は未来で生きていくのが自然なこと」
「俺が自分の我儘を叶える為に、本来隣にいるべきだった人達を悲しませるのは、全く俺の本意じゃない」
言っていることは分かるし、自分より他人のことを考えがちな八左ヱ門らしい主張だ。だけど、当の私がどうしたいかは不思議なくらい考えてくれていないんだよね。
「私のことを思って言ってくれたんでしょう？未来に戻れるの嬉しいよ、ありがとう！」
精一杯の嘘だった。本音と建前が乖離し過ぎていて、そのまま私の心が真っ二つに張り裂けてしまうのではないだろうか。
「声が震えてる。無理してるだろ」
「してない」
「本当の事を言ってくれ」
本音を言ったら、八左ヱ門は私を傍に置いてくれるの？一点の曇りもなく私を愛してくれる？そんな簡単に覆るなら、あの場であんなに強く帰るべきなんて主張しないよね。
「本当は帰りたくないんじゃないか？俺達別れよう。この時代にはお前を幸せにしたいと思っている奴がたくさん居る。俺以外なら誰を選んだってきっと大切にしてくれるよ」
そんなの。どっちにしたって八左ヱ門と離れなければいけないなんて。私の気持ち、何も分かってない。八左ヱ門と一緒じゃなきゃ意味がないのに。
「私が他の人を選んで、八左ヱ門はそれでいいの？八左ヱ門の気持ちはどこにあるの？」
「俺はAが幸せならそれでいいよ」
「……未来へ帰るべきって言うなら、何で恋仲になろうなんて言ったの」
「恋仲になるずっと前から考えてたんだ。俺はAのことが好きだ。なれるなら一緒になりたいし帰って欲しくない。だけど未来へ帰る方法が分かれば迷わず帰してやろうって」
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玉虫厨子(プロフ) - 麗羅さん» わー！一気読みありがとうございます！ 私もどんなエンドを迎えるのか言いたくてうずうずしてしまいます笑 (2月14日 20時) (
レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - すごく面白くて、一気に読んでしまいました！どうなってしまうんでしょうか…。ハッピーエンドじゃなかったら悲しすぎる！笑 (2月14日 10時) (レス) id: 06bc0a6cee (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - Maさん» いつもありがとうございます💓楽しんで頂けて何よりです！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ねこさん» コメントありがとうございます🙇夢中とのことで嬉しいです！どのような結末にするかは決めているので、メッセージで質問頂けたらお答えできます！ (2月13日 22時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
Ma - 鬱展開なのか...それとも...んでも！！めちゃおもろいです！ (2月13日 22時) (レス) id: 8c9f415f7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2024年2月2日 21時
