【忍たま】君の想いは花筏【共通話11】

其の弐 ページ19

「誰も喜ばない………。そっか。そうだね」


留三郎の言う通り、何食わぬ顔して事務の手伝いなどしながら学園に居座ればいい。それがきっとこの室町の世界で一番楽しくて心落ち着く過ごし方、上手な世渡りだと分かっている。だけど私は欲張りだから、皆が必要としてくれないとそこには居られない。居たくない。
どうして私は苦しい生き方しか出来ないんだろう。


「俺の言葉の一部だけ切り取るんじゃねえよ」


「ごめん」


さっき、昌義様に照星さんと結婚するよう言われ、助け舟を出して貰おうとして留三郎にどう思うかを訊ねた。けれど返答は「自分の人生なんだから俺が口出しできない」という言葉。正論過ぎて返す言葉がなかったし、それを聞いてから胸が痛んで仕方がない。

いつしか私は忍術学園の皆に求められることが日常となっていて、留三郎に引き留められなかったことに驚いた。

そして驚いた自分に引いた。

今の私は無条件で皆からの愛を享受出来ると思い上がる、自惚れで浅ましくて恥ずかしくて面倒な女だ。
謙虚な気持ちを忘れた私は忍術学園を出なければと思った。


「やっぱり私は出て行くよ」


「はあ！？即決せずにちゃんと考えろよ」


「私の人生に口出ししないって言ったのは留三郎のほうでしょ？」


ああ、心配してくれている留三郎にこんな物言いしたくないのに。


「おい、ちょっと冷静になれ！」


私の左手首と右腕をしっかり掴んで離さない。


「離してよ……留三郎だって、私が居ようが居まいが構わないんでしょう……！？」


「知りたいか、俺の本心を」


本心なんて、さっきの受け応え見てればわざわざ聞かなくたって大体の察しはつく。改めてはっきりと告げられたら泣いてしまうかもと思い、背を向けた。


「……どうせ、そんなに出ていきたいなら出て行けばいいとか────」


「行くなよ」


後ろから包み込まれるように抱き締められた。


「俺が卒業するまで、どこにも行くな……」


それは武闘派の彼から出たものとは思えない、やっと喉から絞り出したかのような声だった。心苦しさを表すように腕にきゅ、と力が込められた。


「そ、それが留三郎の本心…なの…？」


「そうだ……これからも忍術学園に居て欲しい。ただの我儘を言ってお前の枷になりたくなかったから言わなかった。
嫁ぎ先として佐武鉄砲隊副頭領はかなり安定している。虎若のお父上もお前のことを思って照星さんを副頭領に据えると言ったに違いないしな。行くなとは言えない」

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