苦無の行方の段 ページ16
「人の匂いを嗅いで“誰かと一緒にいただろ”って言い当てたの。小平太って本当に鼻が良いんだね!
ところで、逆茂木を運んで留三郎達はどうするの?」
「逆茂木を加工して火薬委員会が爆破した橋を架け替えるんだ」
「そうなんだ!じゃあ私も──おふっ」
小平太を追おうとして首の後ろの襟を掴まれた。
「こら。その手で運ぼうってんじゃねえよな?」
「ん?包帯はささくれに引っ掛けないよう細心の注意を払うよ!」
「馬鹿野郎、包帯巻いてるうちは手を使うな。伊作にどやされたいのか?」
「どやされたくありません!」
「じゃあ大人しくしてるんだな」
極力手のひらを使わずに運べば何とかなりそうだと思うんだけどなぁ。留三郎はすぐ伊作君にチクりそうだからやめとこう。
「あー…あのさ。悪かったな」
突然、何の前触れもなく留三郎が謝罪した。何か謝られるようなことあったっけ?
「何のこと?」
「苦無、無理に奪っちまったからさ…」
私と目を合わせず、頭をかいて謝る留三郎。
「あれはもういいって。言ったでしょ、これからも忍術学園にいたいから、私の考えがこの時代の常識と乖離してるなら留三郎に渡すって」
「はあ?苦無は返したろ?」
「何言ってるの?あれ以来留三郎と話してないじゃない」
「Aが寝ている時に枕元に置いといたんだが……はっ、
あの人嫉妬して俺達が下がってから苦無を隠したんだ!と勝手に決めつけている。照星さんに限ってそんな事ないと思うけど。
「私が石火矢の音に飛び起きて慌てて出たから気付かなかったのかも。あの民家を見に行ってくるよ」
「俺も行く」
しかし民家には苦無は無かった。苦無が惜しくなった雑渡昆奈門が知らないうちに取りに来た?さすがにそれはないな。
これはいよいよ、と疑いを深めた留三郎。照星さんの名誉のため、ご本人に聞いてみようと提案した。
照星さんは昌義様と共に手潟さんの縁側でご自身の火縄銃の手入れをなさっていた。
「本日はおめでとうございます。ご無事で何よりです」
戦でのお働きを簡単に労って、本題に入った。
「照星さん、私が寝ている時に留三郎が枕元に苦無を置いてくれたそうなんですが、無いんです。何か知りませんか?」
照星さんは静かに火縄銃を置くと、なんと懐から雑渡昆奈門の苦無を取り出した!
隣で留三郎が「ほらみろ!」と言いたげな顔をしている。
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時