其の弐 ページ14
「ダメか?」
眉尻を下げ、唇を尖らせてしゅんとした小平太に降ろしてくれとは言えず、代わりに「川まで出発どんどん」と言えばにっこり笑い、歩いて小川を目指しだした。ちょっと可愛い。
「でも、どうして小平太も来るの?」
「小川の水で顔を洗うんだろ?包帯巻いた手では難しいだろうから手伝ってやろうと思ってな!」
「!!!」
アホか私は?そうだよ。さっき三郎に綺麗に巻いてもらったのもう忘れてる。忘れる原因になったのも顔を洗いに行く理由も全部三郎だけども。
「──で、さっきの話だが、誰といたんだ?」
あああ、話題逸らしきれてなかった…。これは言うまで問い詰められそうだな。
「さっきいたのは…保健委員の皆と利吉さんと三郎だよ」
大勢で一緒にいたというような言い方になってしまったけど別に嘘はついていない。さっき一緒にいた人達を順に羅列しただけだもの。
「ふむ。その中で身体が触れたのは誰と誰だ?」
うっ。更に掘り下げてきた……。言っても構わないんだけど、勘の鋭い小平太には何があったか見透かされそうで嫌だな。
「利吉さんと三郎だけど……」
「鉢屋は夏休み前、お前のここに吸い痕を付けたと聞いたが」
装束の上から人差し指でとんっと鎖骨に触れられたのが擽ったくて「ふひっ」と変な声が出た。
「ええと、その件は謝ってもらって今は普通に話す仲だよ」
「普通ねえ」
(やっぱり何か勘付いてますか…!?)
小川に着くと、私は川を覗き込むようにして四つん這いになり、小平太が手に水を掬って洗ってくれた。お陰で包帯は濡らすことなく顔を冷やすことができた。
「ありがとう、助かったよー!」
手拭いで顔を拭きながらお礼を言うと、小平太は私に近付き、影を落とした。
「……小平太?」
私が顔を上げたのと、小平太の顔が迫るのが同時だった。額と額がくっつけられた。びっくりした、接吻されるのかと思った……。
「……うん、やっと私の好きなAの匂いになった」
「す、好きな匂い?」
「ああ。もちろんお前の容姿や性格も好きだが、特に匂いが好きだ。だから他の男が触れるとすぐに分かる」
額が離されると、首筋に鼻先をつけ、すぅーっと鼻で深呼吸を始めた。
「んやっ、ちょっ、昨日お風呂入ってないから汗臭いよっ!!」
「風呂上がりならいいのか?」
「そういう訳じゃないけどっ!!」
「細かいことは気にするな。お前の匂いは全て好きだぞ!」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時