七松小平太の本能の段 ページ13
一体何だったの……!!
確かに湿気ったきな粉は水で洗い流すのが一番綺麗になるけど、それにしたって……な、舐める、なんて……!!
言ってくれたら手拭いを甕の水で濡らして拭き取るのに!!三郎は何を思って舐めたんだろう…はたまた何も考えてないのかな……。
「お礼、言いそびれちゃった」
まだ三郎の温かくてぬるりとした舌が滑る感覚が唇に残っている。驚きと恥ずかしさだけで不思議と嫌悪感は感じなかったけど、顔の火照りを冷ましたくて水辺を探した。
馬防柵を出てしばらく行ったところに園田村の水源の上ノ池がある。虎若君の放った震天雷が着弾して堤の一部が決壊したが、水の流出はさすがに止まっているだろうからそこへ行こう。
(柵外とはいえ池の辺りも園田村。誰にも言わずに出て行っても問題ないよね)
投降したタソガレドキ兵を連れて来るのに開け放たれたままの門を抜ける。戦は終わってもまだやるべき事がある忍たま達は帰る用意などをしていて、私が出門したことは誰も気付かなかった。
──と、思ったのだが。
「どこへ行く?」
爽やかに汗を流す小平太に声を掛けられた。
「ちょっと顔を洗いたくて。上ノ池の方へ」
「あの辺は爆発で地盤に変化があるかもしれない。泥濘に足を取られて池に落ちても大変だ。そっちの方に小川があるからそこにしておけ」
「そっか!じゃあその小川に行ってくるよ」
お礼を言って小平太の横を通り過ぎると、小平太は再び私を呼び止めた。
「ところでお前、さっき誰と会っていた?」
「…え、な、何で?」
どうしてそんなことを訊くのだろう?まさか唇を舐められたことがバレた?いやいやそんな馬鹿な。
「それはだな、お前から男の匂いがするからだ。しかも複数」
「お、男の匂い…!?」
「私は鼻が
自慢げに人差し指で鼻を擦ってすんと鳴らす小平太。
そうだった、この人は並外れた嗅覚と野生の勘を持っているんだった。
「私はAが穴に落ちて時間移動してしまったあの日からAの意にそぐわん事はしないと誓ったんだが……、」
一応口角は上がっているけど、目なんかはほぼ真顔な小平太が自身の顎に手を添えながらしげしげと私を見下ろす。
そして何かを閃いたらしい彼は一瞬のうちに私の両脇の下に手を滑り込ませて幼児を抱き上げる要領で小平太に抱えられた。
「わっ!?」
「私も川まで行く!」
「行くのはいいけどなぜ抱き上げる!?」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時