其の参(三郎視点) ページ11
Aは利吉さんが北石先生を手配したこと、先生がAに忍たまを落とす為の技を伝授したこと、それを強制的に試させられて失敗したことなどを詳らかに私に話した。
「んで、綾部に仕掛けて逆に胸を触られるとか完全にナメられてるだろお前」
「うっ。そんな気はしてる……。さっき作兵衛にも別件で説教されたし。年相応の威厳すら無いのかな、私……」
「その日々の悔しさが利吉さんの前で爆発したのか」
「まあ、大体そんな感じ?」
巻き終えた包帯の余りの布を鏢刀で切り、鏢刀と包帯は懐へ仕舞う。
「かつて悔し紛れにお前の鎖骨に吸い痕を付けた私とまるで同じじゃないか」
「確かに!!そっかー、三郎はこんな気持ちだったのかー。実は私達似たもの同士だったのかな!?」
「普段十分魅力的なんだから、色なんて仕掛けたらそのうち襲われるぞ。私だったら襲う」
「……え、どしたの三郎、熱でもある?」
巻き終えた包帯の端の処理をして、そこを軽く叩いて処置の終わりを示す。
「冗談だと思うなら私にその術、仕掛けてみろよ」
自分で言っておいて、変な汗が噴き出した。本当にAが仕掛けて来たら、私は襲う他ないからだ。しかしさすがのAもこの提案には乗らなかった。
「襲う宣言されて色仕掛けする人間はいないと思うけど。
北石さんに教わったやり方は本当に成功した事無いの。さっき成功したのはまぐれなのかな、それともタカ丸君になりきったから?」
「そりゃあ相手が中在家先輩と綾部っていう特殊な組み合わせだったからだろ。お前の色が通用するかどうか評価するのはまだ早い」
「ふうん…」
難易度高い人達だったんだ、と一応の納得を見せる。
「なんなら私が今ここで評価してやろうか?ちょうど人もいないことだしな」
「……押し倒したりしない!?」
「ああ、しない」
思案した後、首を縦に振った。
「それじゃあ評価してもらお!」
Aが胸元の襟に手を掛ける──と同時にAの腹がきゅるきゅると鳴り、僅かな緊張感をかき消した。
「…ぶっ。お前、昨日の夜に引き続き今日も腹を鳴らして…!」
「しっ、仕方ないでしょ!あれから何も食べてないんだから!!」
「はあ?また食い損ねたのかよ?」
「だって、起きたら戦始まってたんだもん……誰も起こしてくれないしさ、この手じゃおにぎりも握れないしさ」
「そりゃあ可哀想だな。確か兵糧丸がもう一つだけ…。あったあった」
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玉虫厨子(プロフ) - コトハさん» こちらこそ最後までお読み頂きありがとうございます!鉢屋とのやり取りを気に入って頂けて嬉しいです☺️鉢屋はどうしても書きたいシーンが一つあるので、いつかルートで書けたらなぁと思っています。応援ありがとうございます!! (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
玉虫厨子(プロフ) - ちーさん» とうとう終わりました!連載中は何度もコメントくださりありがとうございました😊そしてこれからも末長く宜しくお願い致します🙇 (12月30日 7時) (レス) id: 9682a1978c (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - キャラ皆んな魅力的ですが三郎と主人公ちゃんのやりとりが特に好きだったのでいつの日か三郎のお話も読めると嬉しいです、玉虫様のご無理のないペースでこれからも楽しみに応援しています。長々とすみません (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
コトハ(プロフ) - 共通章完結おめでとうございます! 素敵なお話をいつもありがとうございます! 作品を読みながらこのキャラとのルートはあるかなっとドキドキしながら想像するのも楽しかったのでこれからキャラ達とどんなルートのお話が読めるのか楽しみです! (12月30日 6時) (レス) id: 97fc43e259 (このIDを非表示/違反報告)
ちー - とうとう共通話が終わったんですね!各キャラの分岐の話も楽しみにしています。最後まで愛読させていただきます! (12月29日 22時) (レス) id: 88a0bb30f3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年12月10日 16時