思索を巡らすの段 ページ10
それまで黙っていた滝夜叉丸君がはい、と挙手した。
「私に案があります!Aさんを夜間お一人にするのがいけないんです。しばらくは護衛代わりに忍たま上級生の部屋を転々としてはいかがでしょう?」
「えっ、滝夜叉丸、それってつまり俺達がAと一緒に寝るって事?」
「尾浜先輩、それは直接的表現で好ましくありません。夜間共に過ごすという事です。無論、Aさんに指一本触れてはいけません!」
「そんなぁ!据え膳食わぬは男の恥って言うじゃん!」
「ちょっと黙ってて下さいね」
「だってそんなの一人部屋の八左ヱ門大勝利イベントじゃないかぁ〜!」
「ばっ!?お前、そもそもAが襲われないようにするための対策なのに俺が襲ったら本末転倒だろ!?馬っ鹿じゃねーの!?」
八左ヱ門が顔を赤くして否定する。勘ちゃんてばお馬鹿な事を考えて。
そういえば四年生のタカ丸君も一人部屋だったなぁと探してみると、目が合ったタカ丸君はニコリと微笑んだ。
「…フフ、愉しい夜にしようね♡」
いや、タカ丸君がそう言うとなんか生々しいな!?
「タカ丸さん!?舌舐めずりして言わないで下さい!」
「ご安心下さい、竹谷先輩とタカ丸さんは一人部屋なので当番の日だけ同室です。Aさんと忍たまの二人きりなんて危険な真似はさせません!!」
名案だろうと言わんばかりに大きな身振りで力説する滝夜叉丸君を、宿敵の三木が突っぱねた。
「全くもって承服できない!第一、男に襲われたAさんが男に囲まれて安眠出来ると思うか!?こんな愚策、滝夜叉丸の欲望の具現に他ならない!」
「ふん、他人の意見を否定するなら代替案を出せと教わらなかったのか!?」
「ならば提案しよう。Aさんのお部屋の前で寝ずの番だ。忍たま上級生が当番制で行う!」
「どんな奇策が飛び出すかと思えば、お前の策だって平々凡々じゃないか!しかも寝ずの番など、お優しいAさんがお気になさらない筈がないだろう!?かえって眠れないに違いない!」
「先輩方は!」
「どう思われますか!」
それぞれ所属する委員会の委員長に詰め寄った。
「俺は寝ずの番をするのは良いと思うぞ。卒業すれば夜通し要人護衛の忍務もあるだろうし、いい演習になるだろう」
「そうですよねっ!?」
「私はAの気持ちを最優先すべきだと思うぞ!」
「七松先輩…!」
小平太が言うと、全員の視線がこちらへ集まった。
「ええっと…?」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時