其の肆(文次郎視点) ページ9
目が覚めると硬い床の上だった。伊作がすぐ近くに座っていて、顔はどこか別の方向を向いている。
「伊作…?」
「あっ文次郎、目が覚めたかい?」
「文次郎君!」
Aも心配そうに俺の顔を覗き込む。
「痛てて…。はっ!侵入者は!?」
「利吉さんと私が追ったが逃してしまった」
「くそ…!」
「それより文次郎君、大丈夫!?」
「え?ああ…ちと首が痛いくらいだ。それよりお前は大丈夫か!?」
「うん、見ての通りだけど…」
「違う!貞操の話だ!!その…ほら、触られてたし咥えさせられていただろう!?」
仙蔵の鉄拳が脳天に入った。
「配慮に欠ける奴だな。お前はもう一遍寝ろ」
「痛ってぇ!何でだよ!」
気付けば忍たまの上級生が集結していて、殺伐とした空気になっていた。
「袷は寝乱れてた訳じゃなくて襲われてたんですか!?」
「許すまじ侵入者ァァ!私の石火矢で首をぶっ飛ばしてやるァ!」
「とっ捕まえてオカ美の餌にしてやる…!!」
「その前に万力鎖で締め上げてじっくり拷問してやらなきゃなぁ?」
「次遭遇したら地の果てまで追いかけるぞ……」
「落とし穴じゃ足りない…学園外周に堀を巡らせなきゃ…」
「今回ばかりは加勢するぞ綾部!俺も物見櫓を建設する!」
「死んでもいい人間なんて、薬の治験にうってつけだね」
「フヘヘヘヘヘ…!」
「そんなに咥えられたいなら一物を鏢刀で切り落として自分で咥えさせてやるとしよう」
「ふっざけんなクソがぁ!!Aさんに触れるなど万死に値する!!」
「Aちゃんを襲うなんて、頓珍漢な髪型にして梟首刑が妥当だねぇ」
忍たま達が瞳孔開いて月明かりに目をぎらつかせる。彼らの呟きを聞いたAは本気で引いている。これは要らん事を口走ったか…。
「利吉さん。あの者に心当たりありませんか?」
「あまり憶測でものを話したくはないのだけど、タソガレドキ忍軍組頭が背丈が六尺以上ある大男だとは聞いた事がある」
「確かにさっきの男は上背がありましたね」
「タソガレドキは現在オーマガトキと睨み合っていて戦支度をしていると聞く。Aを弄ぶ暇などないと思うが…」
「とにかく、Aさんが連れ去られなくて良かった」
「はい、皆さんありがとうございます。夜更けにお騒がせしました」
「しかし、またいつ来るかも分からない。Aに睡眠薬や痺れ薬を使用されれば気付けない可能性もある。どうしたものか…」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時