其の弍（団蔵視点） ページ48
「決まりじゃな！まずAは夏休み初日、馬借を利用して兵庫水軍へ行く。七月の最終日、再び馬借で加藤村まで移動。二週間後、今度は佐武村まで移動。
そして新学期五日前、また馬借で忍術学園まで戻って来るという算段じゃ」
「ハードですね…！いっそのこと夏休みはずっと加藤村に逗留してはいかがですか？そうすればAさんも移動が少なくて楽チンですよ！」
「そんなの団蔵ばっかりずるいぞ！だったら佐武村にずっと居たらいいですよ！田村先輩から聞きました、Aさんは石火矢にご興味がおありだって！うちだったらたくさん見て頂けますよ！」
「静かに！これは決定事項じゃ！A、よいな！？」
「はっ、はい！」
「加藤団蔵。門の辺りでお前さんとこの馬借が待っていると思うから、この返書を渡してきてはくれんか？」
加藤村 加藤飛蔵様と表書きされた文を受け取る。
「分かりました！Aさん、良かったら一緒に行きませんか？」
「いいの？馬を間近で見るのは初めてだなぁ！」
庵を後にして、Aさんと虎若と一緒に門へと向かう途中、Aさんが
「村の名前が名字になってるのか、名字が村の名前になってるのか分からないけど、二人とも由緒あるお家の出身なんだね…！！」
って、おっしゃった。
「まあ、うちは父ちゃんが村を上げての馬借業の頭領、虎若はお父上が佐武鉄砲隊の首領だもんね！」
「だったら二人は若旦那だね！」
うーん、いい響き！今まで呼ばれた中で一番の“若旦那”だな。
「はぁ〜うちにAさんが来るのは八月かあ。待ち遠しいなあ！」
「うちなんて加藤村の後だから一月も先だよ〜。頑張ってそれまでに宿題終わらせとかなきゃ！」
門の辺りに手綱を引いている清八と父ちゃんの愛馬のコレステロール号の姿が見えた。
「清八〜！」
「あっ、若旦那ー！」
走り寄り、学園長先生に託された返書を渡す。
「はいこれ返書。父ちゃんに渡して」
「分かりました。…おや、そちらは？」
「こちら、Aさん！そしてこっちが同室の虎若」
「「初めまして」」
「初めまして、若旦那にお世話になっている清八と申します。もしかして、あなたが頭領が言っていた、夏休みにいらっしゃる方ですか？」
「あ、はい！」
「若旦那、加藤村にいらっしゃる方って女性だったんですねえ！」
「うん、Aさんの逗留の件は僕もさっき聞いたところなんだ！」
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年8月13日 9時
