六年ろ組の夜間護衛の段 ページ44
「お、来たな!」
その日の夜、小平太は満面の笑みで私を迎え入れた。もうすっかり元気を取り戻したようだ。
「ごめんね、お邪魔します」
「気にするな!曲者が何人来たって私が絶対に守り通すからな!」
満面の笑みで苦無を二丁構える小平太に、頼もしいなぁと月並みな感想を述べる。
(どうせ攫われるんだし、護衛なんてもう意味ないけど)
タカ丸君の部屋で一人誓ったんだ。そうと決まったなら悔いの残らないようにここに居られる最後の日まで忍術学園の人達との普通の日常を楽しもうって。
「今晩曲者がやって来たら、私が苦無で迎え撃つ!そしたら、隙をついて長次が縄鏢で縛り上げる!」
「もそ」
小平太は強くて、走るのも早くて明るくて元気だけど、人一倍繊細でもある。
私がタソガレドキに攫われた後にまた小平太が元気を無くしてボロボロになってしまうのではないかと、それだけが心残りだ。
「さ、そろそろ灯りを消すか」
「…もそ、厠へ行って来る。先に寝ていてくれ…」
「ん、大丈夫か?腹でも痛いか?」
「腹は痛くない…」
長次さんが退室した後、小平太が灯りを吹き消した。
「今晩は安心していいからな!お休み、A」
「うん。お休み、小平太」
何度か寝返りを打つけれど、しばらく眠れそうにない。毎日色々な事があり過ぎて途中覚醒したり夢見が悪かったり、ここ数日は睡眠障害気味になっている。
「眠れないのか」
「うん…」
「私も眠れん。何故か長次も帰って来んし、眠くなるまで話をするか!」
小平太が眠れないのは本当かどうかは定かではないが、心残りを解消する為にこの提案はありがたく受け入れた。
「…ねえ、小平太」
「何だ、重要な話か?それならもう一度灯りをつけよう」
どうやら私の声色で何か察したらしい。灯りをつけて布団の上で私に向き直ったので、私も座り方を正した。
「別にそんな改まる必要もないんだけどね。小平太には一つ約束して欲しいことがあるんだ」
「ああ、何でも言ってくれ!」
「もし次に私の姿が見えなくなっても、探さないでね」
「……どうして今、そんな事を言う?」
「や、二人きりだしちょうどいい機会かなって。ほら、三日前は忍たまの中で小平太が一番落ち込んでたでしょ?マラソン途中で消えたから委員長として責任を感じていたっていうのが大きいだろうけどさ。
私はいつ消えてもおかしくない存在だから、あんなになるまで探し回ったりしないでね」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時