其の肆 ページ43
「勘違いしないで欲しいのですが……。
私は、Aさんが伴侶でも……その……嫌ではないと言うか……やぶさかではないと言うか」
「え」
「まあ、そんな感じなので、わざわざ否定しに行く必要もないかな、という感じなのですが」
やぶさかではないって…喜んで私と一緒になるって事?
「しかし二日前に私に気はないようなことをおっしゃっていたと思うのですが…!?」
「私は両親に対して少々天邪鬼でして、嫁取りの件も両親の勧めなので否定から入ったんですよね。それを打ち消すほど今日のAさんが魅力的で。
結婚なんてもっと先で構わないと思ってましたけど、取り合いが勃発しているし、あなたを娶るなら急いだ方が良さそうだ」
目の前の赤い顔したイケメンは、本当に山田利吉さんですか…!?三郎が変装している訳ではないよね…!?
「別に取り合いされてなんかいませんよ…!」
「先日は七松君のみならず、私と同い年の男に求婚されたと聞きましたが?」
求婚らしい求婚をされたのは鹿之介さんだけだ。
「…という事は鹿之介さんも十八歳なんですね」
「………。 とはいえ、今私は脈無しなのは分かっていますから、今すぐどうこうとは思いません。Aさんにも考える時間が必要ですしね。また今度、私と町に出掛けてくれますか?」
「はい、それはもちろん…」
「良かった。では忍術学園へ帰りましょうか。どうせなら他の者が手を出す気を無くすくらい恋人らしく振る舞って、牽制するとしますかね。それくらい構わないですよね?」
付加疑問文に思わず頷いてしまい、往来の激しい街の通りを肩を抱かれて歩いてゆく事になり、利吉さんは視線を
結局、忍術学園の門を潜るまでそのままで、小松田さんは声を裏返らせて驚いていた。
「りっ、利吉さぁん!?いつからお二人はそんな関係に…!?」
「利吉さん、そろそろ…」
「ええ?まだ忍たまの誰にも会っていないんだけど…仕方ない、Aさんに嫌われたくありませんし離れるとしますかね。
さっきの話、暇な時にでも考えてみて下さい」
利吉さんも、小平太も鹿之介さんも、私に好意を寄せてくれるのは純粋に嬉しい。
だけど、私は夏休みが明けたらタソガレドキ城へと連れ去られてしまう。
だから、今度こそ誰からの好意も受け取れない。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時