其の伍 ページ5
「よし、あとはくのたまちゃんにこれを渡して終わりだ」
くノ一教室の近くまで来ると、くのたまちゃん達の楽しそうに盛り上がる声が聞こえてきて、風呂敷の中から有平糖を取り出そうとした時、その集団の中心に利吉さんがいる事に気が付いた。
「利吉さぁん、今日と明日は学園にご宿泊なさるって本当ですかぁ!?」
「げっ!何でその事を…!?」
「やだぁ〜私達も忍者のたまごなんですよ?くのたまの情報収集力をなめないで下さいね〜♡」
「夜、くのたま長屋へお渡りになって下さいな!皆でお菓子ご用意してお待ちしております!」
「くのたまの敷地は男子禁制なんだし、出来る訳ないでしょ…」
そうなのか、利吉さん学園に泊まるんだ。
「でもでも利吉さん、学園に寝泊まりだなんて今までありませんでしたよね?どうしてなんですか?」
「あー…いやー…実は父からの極秘の依頼があってね、それを遂行するのに滞在する事になったんだ」
「山田先生からの忍務ですか?」
「ああ。忍務の妨げとなるから、あまりワイワイと話しかけないでくれるかな…?」
「それなら仕方ありませんね、私達、利吉さんの邪魔はしたくありませんし!」
「私を
「ちぇー。わかりましたぁ」
私は夢中でその場から離れた。
聞いてしまった!
私に三日間接触するのはやはり裏があったんだ!
「利吉。Aに怪しき素振りがないか町へ連れて行って見てみてはくれんか。これ好機と仲間と接触するやもしれん」
「はっ、父上。承知致しました」
「この金子で喜びそうなものを買い与え、喜車の術を掛けろ。ぼろが出やすくなる。女であれば小袖辺りが良いだろうな」
みたいな…?
そうに決まってる。そうじゃなきゃ売れっ子フリー忍者の彼が三日も仕事の受注ストップするなんて考えられない。
「はぁ〜〜〜〜、明日からやだな…」
別に探られて疚しいことは一つもないけれど、やはり疑われるのはショックだし、それを分かって過ごすのは相当胆力が必要だ。
(明日、利吉さんに会うより前に吉野作造先生の所にお手伝いに行こうかな?)
その後、食堂でくのたまちゃんに出会したので有平糖は無事に渡せた。
寝る前には文次郎君、留三郎、伊作君がそれぞれお土産のお礼を言いに来てくれて、その日は更けていった。
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時