鬼ごっこ大会の段(半助視点) ページ21
「何でワタシなんですかーッ!?」
「厳正なる抽選の結果じゃ、仕方あるまい」
Aにいい所を見せようと私を狙ってくる輩がいるに違いない。そうなれば採点どころじゃないよなぁ〜。
それに上級生から「何で抽選箱に土井先生の名前が混ざってんだ」みたいな視線を感じる。そんなのは学園長先生に抗議してくれよ〜!
「ううっ、胃が痛い……」
私の隣で利吉くんが溜息をついた。
「ハァ。参ったなぁ…」
「どうしたの?利吉君」
「Aさんの為に三日間の休みを取ったんですから、正しく使いたかったなって思いまして」
「まあそう言うな利吉。侵入者に撒かれたのならお前もまだまだ未熟という証拠。勉強のよい機会だろう」
「ええ…、そうですね」
利吉君はお父上にそう言われて悔しそうに口を一文字に引き結んだ。
「今から逃走時間じゃ!ヘムヘムが鐘を鳴らしたら開始、もう一度鳴らしたら終了じゃ!」
そう言うと忍たま達は弾けるように四散した。仕方ない、私もやるか。
「A、こちらにおいで」
「土井先生…私のせいで面倒な事になってしまってすみません」
「気にするな、君はどう考えたって被害者なんだから。さ、隠れよう」
そうしてやってきたのは、私と山田先生の部屋。無理だとは思うが、出来る範囲で採点を試みようと思ってのことだ。
「私の近くにさえいてくれたらいいから、好きに過ごしていて」
「分かりました」
採点用の朱色の墨をすり始めると、開始の鐘が聞こえた。Aは暫く部屋の中をうろうろして棚を眺めていたりしたが、そのうちする事がなくなって私の近くで手元を眺め始める。
(まあ、する事なんて何もないよな)
「失礼します!」
スパンッと小気味いい音を立てて部屋の戸が開け放たれる。善法寺伊作だ。
「土井先生なら裏をかいてここにいらっしゃるんじゃないかと思いましたよ!覚悟!」
頭の風船目掛けて四方手裏剣が飛び、それを躱すと背後の柱に突き刺さった。
「来たな、上級生」
チョークの箱をわざと蓋を緩めて投げつける。すると粉が舞って善法寺がむせる。その隙にAを横抱きにすると、部屋を飛び出した。
「もそ!」
そこを外に待機していた中在家が縄鏢で襲う。
「おっと!」
すかさず横に飛んでそれを避ける。が、騒動が騒動を呼ぶ。
「あ!いた!Aと土井先生!」
「やっぱり採点どころじゃないなぁ〜!?」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時