其の弍 ページ11
「「どちらの案がAさんのお気持ちに則していますか!?」」
「私が選ぶの…!?」
「はい!」
「ええっと…三木の寝ずの番っていう案は、申し訳なさすぎるから無しで…」
三木はピシャアアアン!と稲妻が落ちたような、そんな衝撃を受けた顔で固まってしまった。
「そら見たことか三木ヱ門!やはり女心も私の方が理解度が上だなぁ〜!?」
「三木違うのよぉぉ!三木は優し過ぎるんだよぉぉ!あと会計委員会で徹夜に慣れすぎなの!!徹夜って本当はあんまりしない方がいいから!!
もし私がどっかの城の姫様とかだったら超名案!三木が優勝!だけど私は平民だから、ね!?」
頭を撫でたくって背中もポンポンしながら宥めすかしていると、三木の顔がぶわっと紅潮した。
上級生なのに子どもをあやすようにしてしまって恥ずかしかっただろうか。
「私の案が採用されたのに何だこの敗北感はッ!?」
「滝夜叉丸君も、考えてくれてありがとうね!!」
彼の頭も撫でると、はっハイ!と元気に返事して少し顔を赤らめながら瞑目し、大人しく撫でられていた。髪ツヤッツヤだった……私もそんな髪になりたい。
「で、滝夜叉丸君の案も悪いから無しで…」
「エエエエッ!?」
「私はその案、取り入れるべきだと思うけれど」
滝夜叉丸君の案を支持したのは利吉さんだ。
「えっ、利吉さんっ!?」
やはり私には至近距離からの監視が必要だと思っておられるのだろうか…。
「ならば明晩、六年生からいろはの順で当番を回すとして、今夜は利吉さんにお願いしよう。よろしいですか?」
「構わないよ。誰か布団を運んで貰える?」
「俺が運びます!」
真っ先に声を上げたのは浜君だ。
「ありがとう。五年長屋の竹谷君の隣の部屋だから」
「だったら俺も手伝います」
八左ヱ門も手伝いを進み出た。浜君が掛け布団、八左ヱ門が敷布団を運んでくれることになり、その夜は解散となった。
浜君、八左ヱ門に続いて枕を持った私と利吉さんが並んで歩く。
「すみません利吉さん、妙な事に巻き込んでしまいまして」
「構わないったら。Aさんはどうでもいいこと気にして、大事なこと気にしないんだから…」
「大事なこと、ですか?」
「貞操だよ」
「ええ、まあ貞操ももちろん大事ですけど、連れ去られて忍術学園を離れることや、皆に迷惑が掛かることの方が嫌ですかね」
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作者名:玉虫厨子 | 作成日時:2023年8月13日 9時