お土産配布の段 ページ1
忍術学園に戻ると利吉さんとは別れ、私は早速お土産を渡しに行くことにした。
委員会に配布するから仙蔵・文次郎君の部屋、小平太・長次さんの部屋、留三郎・伊作君の部屋、兵助・勘ちゃんの部屋、八左ヱ門の部屋で計五部屋回れば済む。
「兵助〜勘ちゃん〜いる？」
「わ、Aだ！お帰り〜！」
勘ちゃんが横からぎゅっと抱きついてくる。
「お帰りA、どうしたのだ？」
「うん、お土産をね。はいこれ、委員会の皆で食べてね」
兵助と勘ちゃんに一つずつ渡すと、兵助は物珍しそうに眺め、勘ちゃんは目を輝かせた。
「えー嘘！？有平糖！？俺好きだよこれ〜」
「わざわざありがとう！次の委員会で皆で頂くよ」
勘ちゃんは私の手を取ると、手の甲に口付けした。
「ふぇ、ふぇえ！？」
「ありがと。ちゃんと皆で分けるね」
「か、勘ちゃん！？軽々しくそういう事しないっ！！じゃあね！！」
「Aだからしてるのにぃ〜」
お次はその二つ隣の八左ヱ門の部屋。
「八左ヱ門ー、いるー？」
「な、なっ、A！？ちょっと待って！」
ゴソゴソバタバタと慌てる音が聞こえる。
「忙しいならまた明日で大丈夫だよ？」
「待って！今で大丈夫！！」
全然大丈夫じゃなさそうな音がするけど…！？
「おっお待たせ！！」
少し息が弾んでいるし、髷も少し曲がっているような気がするし、袷も左右歪んでいる。
部屋を覗き見ると布団が敷いてあった。慌てて起きたみたいだ。
「ごめん、起こしちゃったね」
「違…いや、うん、そう！寝てた！けど大丈夫！」
「そ、そう？あのこれ、町で買って来たんだけど、生物委員会の皆でどうぞ」
「え……ありがとう……！うちは俺以外下級生ばっかりだから、皆喜ぶよ！」
「八左ヱ門も嫌いじゃなかったら食べてね」
「勿論！！毎日ちょっとずつ齧って大事に食べるよ！！」
本当に嬉しそうな顔で受け取ってくれる八左ヱ門に私も嬉しくなる。
「ありがとう！ちょっと動かないでね…」
袷を引っ張って整えてあげると、八左ヱ門は真っ赤になって後退った。
「…それはまずい、本当そんな事他の男にはするなよ！？」
「あー…そうだった。利吉さんに言われてたんだっけ」
「利吉さんに何言われたって？」
「天然人たらしだから言動に気をつけろって。ごめんね、気にしないでね！また明日〜！」
「え、ちょ、俺にはしていいよ！？おーい、Aー！？」
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作者名：玉虫厨子 | 作成日時：2023年8月13日 9時
