223話 ページ25
「では、お待ちください」
女声で無事接客を終え、戻ろうとする新八。
「あっ、待って!」
Aが安心したのも束の間、エロメスは新八の手を掴む。
そしてそのまま引き寄せた事で、新八は前屈みになり、自然に顔が近くなる。
「…っておい、何してんでィもど」
『ちょっと待って』
「…ん?何、俺を永久に接客してくれ」
『んな訳あるかボケアホ毛』
様子のおかしいAにやっと気づいた2人も、エロメスのテーブルを見つめる。
「…あ、あの……?」
「…やっぱり、新八さんですよね?」
『ぬあぁぁ、顔近い!!つーか気づかれた!?』
「…え、あれメガネ君なノ?」
エロメスと新八はひそひそと話しているが、意識を全集中しているAにはもはや効かない。
「なっ、な、何で……」
「分かりますよ!お顔はやっぱり、いつものカッコいい新八さんですもん!」
『何が"もん!"じゃ、引きちぎるぞ!!』
「…おめぇ、キャラ変わってるぞ」
「あっ、やだ、私ったら"新八さん"って呼んじゃった…先輩なのに…てへっ」
『何が"てへっ"じゃボケがぁぁぁぁ!!』
「イデデデデ!!A止めて!アホ毛取れる!!」
「ば、番長!?」
「ブフッ…!こりゃ傑作でィ」
「…え?あそこにいるのって、A先輩ですか?」
「あ、ほんとだ…って、え…?」
神威のアホ毛を引きちぎろうとするA、止める阿伏兎、スマホで撮る沖田、というカオス空間に、新八は目が点になる。
「あれ、不良の人たちですよね…?やだ、怖い…
A先輩、あんな人達と交流あるなんて…」
掴んでいた腕をさらに引き寄せて、恋人のように腕に絡む。
Aはこの状況に気づいていない。
新八の二の腕には胸が当たり、手先は太ももに触れそうだ。
エロメスの顔もさらに近くなる。
「…っ!」
「沖田先輩までいる…!
男の人と仲良すぎるのって、不安ですよね…私だったら、あんな心配、させないのに…」
「…っ、ち、注文、通してくるので!失礼致します!」
「はーい♡」
慌てて振りほどき、バックヤードに戻る。
それを見送ったエロメスは、まだ揉めているA達を眺め、口元に笑みを浮かべた。
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作者名:ウミガメ | 作成日時:2023年7月20日 10時