190話 ページ41
屋台の通りを少し離れると、人通りがまばらな遊歩道がある。
そこのベンチに腰掛け、Aと新八はりんご飴をかじっていた。
結局、土方とミツバの味変で食欲をなくし、たこ焼きはスルーしていたのだった。
『いやー、楽しかったねー』
「…何か、ほとんど知り合いに会ってばっかりだったような気がするけど」
『…確かに。まあ地元だし、皆来るよね』
そう話していると、ふと思ったことがあった。
『…今日は、どうして花火大会だったの?』
「え?」
『…デートの、場所』
あぁ…と新八は少し黙り込む。
『…あっ、なんか、ごめんなさい』
「いやっ、全然!
…何となく、特別な日って気がしたから…かな?」
『特別?』
「僕が小さいときからこのお祭りがあったんだけど、ほぼ毎年、僕の誕生日にやってたんだ」
『へぇー…!』
「お祝いの、特別な日って感じだったから、凄い思い入れがあって」
と、はにかむ新八にAはひっかかる。
『…待って?誕生日?』
「え?うん」
『今日…は…8月…』
「12だね。僕の誕生日」
あれ、言ってなかった?と首を傾げる新八とは裏腹に、Aはサーっと青くなる。
『うっそ!ごめん!大事な日にただただ付き合わせちゃって、何も出来てないじゃん…!!』
「いやいや、僕が誘ったんだから…」
『何か奢るよ!…たこ焼き!たこ焼き買ってくる!』
「だ、大丈夫だから!座って!」
慌てて立ち上がったAの手を、パッと捕まえる新八。
「…今日、一緒に過ごせただけで十分だよ」
『…そう?』
「うん…あ、花火も、ちゃんと一緒に見ようね?」
と、ベンチにまた座らされる。
「ちょっと僕、トイレ言ってくるね。Aちゃんは大丈夫?」
『うん、待ってるね!』
「分かった、じゃあ待ってて」
と、Aは新八の背中を見送った。
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作者名:ウミガメ | 作成日時:2021年7月23日 18時