175話 ページ26
「…新八!ちょっといい?」
教室を出て、昇降口へ続く階段を降りようとした時に、新八は葵の声に呼び止められた。
「どうしたの?」
「…Aの事でなんだけど、今から時間ある?」
A、という単語にドキッとする新八。
大会の事もあり、気になっていた新八は葵に着いていった。
「…それで、話って?」
「実はA…こないだからストーカーされてるんだ」
「えっ!?」
まさかの展開に対する驚きと、Aへの心配が新八を埋め尽くす。
「どっどういうこと!?」
「実は__」
と、ざっくりとこれまでの経緯を説明される。
「ま、まさか、田中君がそんなことをしてるなんて…」
「…でさ、今からもう一度皆で説得しに行くから、新八も協力して欲しいんだ」
そこで着いたのがプレハブ小屋。
いつもな皆のたまり場だが、今日は状況が違う。
気を引き締めていると、葵は高杉達の部屋とは逆側の部屋の前で座り込んだ。
「えっ?」
「…もしもし?ごめーん!ちょっと遅れそうで!
そろそろ始まる?」
と、わざわざ部屋の外からビデオ通話を始めたのだ。
「えっ…入らないの?」
「ほら、始まったよ」
向けられたスマホの画面には、いつもと違う物々しい雰囲気の部屋が写し出されている。
ソファーに座るAの横顔が、かなり緊張した様子であるのを見て、ギュッと胸が苦しくなった。
「…やべ、思った通りヒートアップしてきたな」
画面の向こうでは、田中がAに交際を強く求め始めた。
「行くぞ」
「あの、結局僕は、どうしたら…?」
「大丈夫、俺に任せな!」
そうして、葵はプレハブ小屋の扉を開けたのだった……。
「…で、今に至るという」
『…完全に被害者じゃん…申し訳ない、巻き込んじゃって…!』
「いやいや!って言うか、むしろうちの部員が迷惑かけて申し訳ない」
謝罪合戦が繰り広げられるのを尻目に、ペットボトルをゴミ箱に捨てる葵。
『…で?いい加減説明してくれない?何で嘘付いてまであんなことしたのか』
10人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ウミガメ | 作成日時:2021年7月23日 18時