172話 ページ23
万斉が部屋に入ると、恐る恐る足を踏み入れる塩スト。
そこで、奥に座るAと目が合った。
「…あっ、Aさん!!」
『!!』
Aに駆け寄ろうとする塩スト。
ゾクッと背筋が凍る様な恐怖で強ばるA。
そんな2人の間に、いち早く高杉が立ちはだかる。
「…_っ!!」
ギロリとした目付きで、Aを守ろうとばかりに立ちはだかる高杉に威圧され、後退りする塩スト。
そこでまた子がドアを閉め、しばし部屋はピリッとした静寂に包まれた。
そんな中響き渡る、軽快なメロディ。
「あっ、ごめん、私だっ…て、葵くん!?」
桜のスマホに、葵から着信があったようだ。
「もしもし?」
【ごめーん!ちょっと遅れそうで!
そろそろ始まる?】
「うん、皆揃ったよ」
【了解!ごめん、このままビデオ通話にして繋げてくれる?始めてもらって大丈夫だから!】
「わかった!」
と、ビデオ通話にして、部屋全体が見えるよう、スマホを構えた桜。
「…じゃあ、始めるか。
説明を武市、撮影をまた子、頼んだ。万斉と似蔵はソイツが余計な真似しねぇよう見とけ」
高杉に言われた通りに、各々位置につく。
「…あ、あのーこれから、何を…?」
恐る恐る絞り出したであろう、震えた声で、塩スト田中が問う。
「…Aに対するストーカー行為についてだ」
「…はぁっ!?」
ガバリと口を開け、信じられないという表情で辺りを見渡す。
「どっ、どういう事ですか!?」
「今からお話しいたします。そこから動かないように」
その武市の一言で万斉と似蔵が田中の両脇に着く。
混乱した表情のまま、田中は二人に挟まれた。
そのまま、武市が報告を始めた。
先日の内容と、Aは田中に対する好意は無い旨を合わせながら説明していく。
途中、田中の妹についての話もあったが、都度また子が軌道修正してなんとか進めた。
『…分かった?』
「…っ…」
『言い方キツくなっちゃうけど…あなたの、勘違いだったの』
Aからバッサリ告げられたそれがトドメになったのか、田中はゆっくり頷いた。
「…すみません…今まで、彼女とかいなかったから…好きな人ができて、高校でやっと彼女が出来るって…舞い上がっちゃってました…」
ぼそぼそと呟くその姿は、心から反省しているように見えた。
「…もう、こんなことはしません。反省してます
…で、でも…あの…」
『ん?』
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作者名:ウミガメ | 作成日時:2021年7月23日 18時