八人 ページ9
『A、褒めてや。俺今日も戦争で勝ったで』
緑の王子は、頰を血で染め上げて笑う。君に褒めてもらうためだけにちゃんと任務を遂行して来たんだよ。
君が頭を撫でてくれるから。君が笑ってくれるから頑張っていたんだ。君の泣いている顔も、笑っている顔も全部全部全部王子は大好きだった。
王子は君の手を握ろうとしたけど、それは空を掴んで離さなかった。
『…こんな血だらけの手じゃAが汚れるだけやんな。俺はもう触れられへんわ』
「そんな事ない。ゾムの手はあったかくて充分優しいんだから。誰かを守れる強さがあるその手、私は好きだよ」この言葉、君以外に誰が投げ掛けてくれただろう。
真一文字に結ばれている口。かつてはあんなによく笑っていたのに。あの事件さえ起きなければ、君は今起きていたはずさ。
『…なぁ、何で庇ったん?最優先は自分の命やろ…‼』
君は、自分の隊にいた冴えない部下を敵の爆弾から庇ってこうなった。全身大火傷になって庇ってもらったのに、その張本人は戦場を直ぐ様逃げ出して、敵国の捕虜になって死んだ。善の行為は報われなかった。
王子はそれを後から聞いて、一週間かけてその国を無残に滅ぼしたんだよ。君の為に。君の敵討ちの為に。
『…俺、そろそろ仕事に戻るわ。また明日顔出すからな』
燃え滾る復讐心と、何処にぶつければ良いのかわからないもどかしい感情を吐き出しに、今日も王子は戦場に立つ。
緑の王子は味方すらも怯えさせる最大の脅威に堕ちた。
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