【wrwrd】眠り姫の悪戯 (ページ8)

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七人ページ8

『A、一緒にお茶会するめう』

ティーカップを二つ手に下げた深緑の王子は笑う。ポットから注がれた紅茶はまだ暖かい。湯気が空に立ち昇って、その場でくるりと踊って消えた。

君は、王子とお茶会をするのが日々の楽しみだったね。紅茶が大好きで、他の国に仕事で訪れる度にその地の茶葉を買い込んでいたのを覚えているよ。

匂いだけで紅茶のフレーバーを当てることが出来た君は、いつも得意な顔してそれを口に運ぶ。茶の王子も、深緑の王子もそんな芸当出来なかったもんね。

『今日のは結構えぇ感じに出来たんやで』

マカロンをさくりと食べた王子は顔を綻ばせて言った。甘い物をそこまで食べない君は、今頃王子を見て微笑んでいるのかな。

アリスのいないティーパーティは永遠に続く訳じゃない。主役のいないパーティーなんてつまらないじゃないか。

半分程空っぽになってしまったカップの底を見ると、王子の顔がぐにゃりと歪んで見えた。紅茶の鮮やかな紅とも茶とも言えぬ色がどんどん鈍く変わっていく。

『…一人でするお茶会はこんなに虚しいんやな』

「今日のは缶入りマスカットか？匂いから美味しそうだね」と目を細める君はいない。王子のいつものふにゃりとした笑顔も少し引きつっている。笑いたくても笑えないんだ。

最近、御茶菓子が甘く感じられないのはきっと君のせいだ。王子の味覚は、ウサギ穴に飛び込んだまま帰らない。