【wrwrd】眠り姫の悪戯 (ページ6)

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五人ページ6

『今日も来たで、A』

桃色の王子は君の髪を撫でて言った。君の髪は指通りがあって、艶があって本当に綺麗だ。

髪は女の命だって言って、自慢の髪を結ばずに戦場を駆け巡るその姿はまるで舞を踊っているかのよう。美しいで済ますわけにはいかないくらいに。

そんな君に、王子はいつしか惚れていた。

『あんな、俺最近全然ご飯が美味しくないねん』

王子はぽつりと悩みを零した。王子は皆がよく知る大食いだ。大皿料理をわんさか作っても、彼の目の前に広がるのは大量に積み重なった空き皿だけ。

そんな王子を眺めるのが君の好きな事の一つだったよね。「ロボロは食べているとき、ほんと幸せそうな顔するな。良い顔してるよ」と、頬杖をついて嬉しそうに微笑んでいた。

君は料理が好きだから、使用人と一緒に晩御飯を作るのが習慣だった。君の料理はとても美味しくて、王子は君が作り始める前よりも大食らいになっていたんだよ。

『どうしてなんやろな。味も何一つ変わってない筈なのに』

理由は明確だ。君が居ないからだよ。君は大食らいの彼を小食にしてしまった。人一人で他人は大きく変わってしまうんだ。

『起きたら、また晩御飯作ってな。俺全部食べるから』

心優しい彼は、涙を一滴垂らして両の拳を握り締める。悲しみは空腹に変わらない。憂鬱な虚無を広げるだけだ。

胃袋を掴んで離さない君の料理は、王子の心を未だ掴んで離さないらしい。