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「しのぶ…もう煉獄さん行った?」
「えぇ、自分の屋敷に戻りましたよ」
「…そう、ありがとう」
Aは病室のカーテンをそっと開け、その中から出て来た。ずっと其処で彼らの会話を聞いていたらしい。 名残惜しそうに、煉獄が座っていた椅子を見つめていた。そっと椅子の表面をなぞる。
「良かったですね、貴方の事を好いているって知れて」
「…ばっ、良くないわ!この気持ちはずっと抑えていたかったのに…こんなの諦めきれないじゃない」
心臓の辺りを服越しに握り締める。その目は涙で潤んでいて、睫毛が揺れた時、溢れ出た。
「私は…私はずっと片想いのままで良かった。片想いしたまま死ねたなら、それで良かった。その方が幸せだもの」
「どうして…そんな事言うの。折角また会えたんですよ?貴方が何年も何年も焦がれた人に」
「だって苦しいの‼夢にまで見た人が目の前にいるのに、その人は鬼殺隊の隊士なのよ⁈いつ死ぬかわからないの‼そんな人と両想いだって知ってしまったら…辛いに決まってるじゃない」
片想いのままだったら、きっと此処まで辛くないわよ
顔を覆って泣き出してしまった。しのぶは顔を歪め、Aの細い身体を抱き締めた。
「人を好きになるって…難しいのね。好きになればなるほど胸が苦しいの。死んでしまうって分かってる人に愛して貰うなんて…辛いわ。いっそ私も死んでしまいたい」
「人を愛した分だけ、亡くなった時に感じる悲しみは大きいの。誰でも同じ、誰も避けられない運命です…それに、まだ生きている人を死ぬ前提で進めるのはやめましょう。不吉です」
「そうね…ごめんなさい。私が悪かったわ」
まるで陰と陽。捉えている価値観が全く違う。恋を自覚して前に進む者と、恋を自覚して殻に閉じ籠る者。自分にはどうしようも出来ない しのぶ はただただ歯痒い。
「好き…大好きなの。あの人の事が大好きっ。どうしよう、しのぶ…私…私‼」
片翼のもげたアゲハ蝶。太陽のような熱い大きな花に焦がれた。
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橘欅(プロフ) - ネコ2世さん» コメントありがとうございます!幸せな気持ちになっていただけるなんて…光栄です!どうかこの作品をご贔屓に! (2019年11月13日 16時) (レス) id: 4f6b87549d (このIDを非表示/違反報告)
ネコ2世 - 主人公が可愛らしくて好きです!煉獄さんとのやり取りが微笑ましくて読んでる側もすごく幸せな気持ちになります! (2019年11月12日 16時) (レス) id: 6d89e33ad2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:橘欅 | 作成日時:2019年11月10日 22時