365日 (ページ8)

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MONSTER⑧ ページ8

予定していた2週間目の夕方
三澄班は解剖のため、オフィスには
系さんと和山さんと3人だけだった。

『中堂さん、今お時間よろしいですか？』

「どうした？」

系さんは、作業の手を休めこちらを見る。

『今日の報告書のここなのですが…』

「ああ、ここは…」

「ちょっと系さん！私の時と対応違くない！？」

急だったので私は驚いて
反射的に隣の和山さんの方を見る。
系さんは動じず、報告書を見たままだ。

「もっとあたしにも
優しくしてくれてもいいと思うの！」

系さんは、ガタッと椅子から立ち上がると
吐き捨てるように言う。

「ああ、うるせぇ！
何度も言うが、名前で呼ぶな！」

同時に、ぐいっと私の腰を引き寄せた。
突然の事にバランスを崩しそうになったが
系さんがしっかりと支えてくれる。

「俺を名前で呼ぶのも、俺に触るのも
Aだけだ。」

予想外だったのか、さすがの和山さんも
目を丸くしている。

「分かったら大人しく仕事しろ。」

系さんは、和山さんを上から見下ろし
デスクの上の資料の山を指差す。

「なんだ～。
そういう事なら言ってくれればいいのに～。

では、行ってきます！」

和山さんは、すぐにいつも通りに戻り
敬礼のポーズをすると
資料を取り、オフィスを出て行った。

ふたりきりになったオフィスは
とても静かだった。
系さんは、未だ腰に手を回したままだ。

『あの…系さん、そろそろ…』

「2週間も我慢したんだ。まだいいだろう。」

系さんは、更に強く引き寄せると
私の髪にキスをする。

「中堂さ～ん！」

所長室のドアが勢いよく開き
神倉所長の叫び声がオフィスに響いた。

「途中までは大目に見ていましたが
それ以上はだめですよ。ここは職場です！」

系さんはあからさまな舌打ちをした後
仕方ないという様子で私を解放する。

『か、神倉所長…すみません…』

私は、恥ずかしさのあまり
神倉所長の顔を見ることができなかった。

系さんは私の頭をポンと撫でると
所長室に入っていき
神倉所長は慌ててその後を追った。

「ちょっと中堂さん！
これ以上そこに物増やさないでくださいよ～。」

神倉所長の悲痛な叫びがこだまし
恥ずかしさをごまかすように、笑みがこぼれる。

私はいつから、こんなに弱くなってしまったのだろうか。

みなさんに甘えてばかりだ、と反省しながらも
彼の感触を思い返すように
自分で自分の腰に手を回した。