365日 (ページ21)

今日:13 hit、昨日:7 hit、合計:84,576 hit

好きな人② ページ21

「東海林さん、行きましょう。」

「あー、六郎…悪いねわざわざ。」

辛そうに椅子から立ち上がると、こちらを振り返る。

「じゃあミコト、A、ごめんね。よろしく頼んだよ。」

『いえいえ。全然気にしないで下さい。
東海林さん程はお役に立てませんが
こちらは大丈夫なので、ゆっくり身体を休めて下さいね。』

「ありがとう～！」

東海林さんがぎゅっと抱きつく。
身体が熱い。熱が結構高そうだが大丈夫だろうか。

そう思った瞬間、東海林さんがグイッと引っ張られ
私から離れさせられる。

『中堂さん…！？』

「こいつにうつるだろうが。
さっさと帰れ。」

「病人になんてことを…」

東海林さんは恨めしそうに系さんを見上げる。
分かりづらいけれど、系さんも東海林さんを心配しているのだろう。

「久部くん、東海林の事頼んだよ。」

「は、はい…！」

ほらと、気を取り直すように、三澄さんが優しく
東海林さんの背中を押す。

東海林さんの荷物を持ち、エレベーターまでお見送りをすると
ちょうど、神倉所長が所長室から出てこられた。

「みなさん、最初のご遺体が到着しましたよ。
急いで準備して下さい。」

オフィスから、手を挙げこちらに声をかける。
そのまま解剖室に向かい、すぐに準備にかかることになった。

マスクをし、手袋をはめた所で
オフィスに着いたら飲もうと思っていた
鎮痛剤を飲み忘れてしまったことに気が付いた。

仕方がないので、まあ何とかなるだろうと
ぼーっとする頭を奮い立たせ
大きく息を吐き、解剖室へ入る。

「久部くんもまだ戻ってきていないので
とりあえず3人で1体ずつ解剖しましょう。」

「はい。」

「ちょっとまて、こっちはAがいるんだ
なぜ一緒にやらないといけない。」

「中堂さん、Aひとりで両方やらせる気ですか。」

「そうは言っていない。お前が一人でやればいい。
こいつは俺のものだ。」

言い合うふたりの間でおろおろしていると
突然飛んできた言葉。
心臓が跳ね、思わず顔が熱くなる。

「小学生ですか…。」

三澄さんは、はーっとため息をつくと
蔑むような目で中堂さんを見る。

『中堂さん、久部さんが戻ってくるまでの間だけでも
3人でやりましょう。
その方が早く終わりますよ。』

「…分かった。」

三澄さんは系さんの様子に目を丸くすると
再度大きくため息をついた。

「では始めましょう。」