365日 (ページ3)

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MONSTER③ ページ3

お化粧直しをしていた和山さんが戻ってくると
またオフィス内が賑やかになった。

神倉所長に言われたのか
仕事だからと観念したのか
系さんもデスクに座って作業をしている。

彼女はとても優秀で、頭の回転も要領も良く
特に英語は、留学していただけあってペラペラで
とても勉強になるし、助かっている。

ただ、彼女は常に系さんの近くにおり
系さんに話しかけても、全ての会話に参加してくれるので
何となく、系さんと話をすることができなくなってしまった。

解剖の時も、次に使うであろう器具を手に取っても
すべて彼女が受け取り、渡してくれるので
私は記録をつけるばかりで、あまり役に立てておらず
自己嫌悪に陥るばかりだ。

「ねーねー系さん、これはどういうケース？」

和山さんが、系さんの腕に触れながら訪ねている。

「ねーったら！」

「うるせぇ。名前で呼ぶな。」

系さんは、和山さんの腕を振り払い、睨みつける。

「いいじゃん。減るもんじゃないし。」

「お前に名前で呼ばれる筋合いはない。」

「ケチ～。それに私はお前じゃなくて季恵です～。
じゃあ六郎！これ教えて。」

和山さんは椅子を回転させ、今度は久部さんに訪ねる。

「僕に聞くよりも三澄さんに聞いた方が…。」

「私でよければ見るけど。」

困る久部さんに手を差し伸べるように
三澄さんが和山さんの資料をのぞき込む。

「さすがミコト姉さん！ありがと～！」

天真爛漫とは彼女の事をいうのだろうか
と思いながら、隣の東海林さんをちらっと見ると
苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。

「今のこの職場、精神衛生上良くない…。
あの席も、ずっとAが座ってたのにね。」

東海林さんは、ぐったりした様子で私に耳打ちする。

『いえ…席はもともと決まっていないですし。』

本当に苦手なタイプなのだろうと苦笑しつつも
自分の中にある黒い感情が動き出した事に気付かずにいられず、それでも気にしないよう
必死に目の前の仕事のことを考えた。