365日 (ページ23)

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好きな人④ ページ23

ふと、身体に何かがかけられたような重さを感じ
ぬくもりの後に落ち着くにおいがしたので
ゆっくりと目を開けるが、眩しくてすぐにまた目を閉じる。

手で日差しを遮りながら、そっと目を開けると
見覚えのある、大きな上着がかけられていた。

風が止んだように感じる、という事にも気が付き
寝ころんだまま見上げると、いつの間にか
隣に系さんが座っていた。

「すまん、起こしたか。
しかし、こんなところで寝ていたら
東海林の二の舞になるぞ。」

系さんは優しく言い、私の前髪を上げるようになでる。

『け…あ、いや…中堂さん…？』

まだ完全には起ききれていない頭で
思わず名前で呼んでしまいそうになりながらも
ゆっくりを身体を起こす。

系さんはふっと笑うと、膝に落ちた上着を取り
今度は肩にかけてくれた。

『ありがとうございます。
あったかい…』

そっと系さんの肩に寄りかかる。

「大丈夫か？」

私の肩を抱き、頭をそっと撫でてくれる。

『はい。薬も飲みましたし
だるいだけなので大丈夫です。』

力の抜けた笑顔で言うと
系さんは少し考える表情をする。

「月経は先週終わったはずだから、排卵痛か。」
毎月そんなに重かったか？」

『け…系さん…！』

さらりととんでもないことを言い当てられたため
今度は、思わず名前で呼んでしまった。
一気に目が覚めた。
医療従事者でもさすがに、こうもはっきり言われると恥ずかしい。

「なんだ。恥ずかしい事じゃないだろ。
俺がお前の身体の事を分からないと思っていたのか？」

うろたえる私をからかっているのか
にやりと笑いながら、顔を覗き込む。

『仕事での事なら大丈夫ですが
好きな人に自分の身体の事を言われるのは、恥ずかしいですよ…』

上着の袖を持ち、顔を隠す。
袖からちらっと目を出し、系さんを盗み見ると
今度は系さんが、どことなく顔を赤くしているように見えた。

何か変な事を言ってしまったのだろうか。