【募集企画】大聖堂の地下階層【本編】

フロウのお買い物【フロウ・ラグランジュ】 ページ8

フロウはある日、こんなことを言われた。

「ずっと思っていたのですが、フロウさんはとても物持ちがいいですね」

先だって宣教の為に訪れた街にて利用した施設に宛てて、フロウの書いた謝礼の手紙を添削していたティムは、彼の随分使い込まれたペンを眺めていた。

「そうかな？」

「そうですよ。そのボールペンも、何年か前にもらったものをインクを入れ替えながら使っているのでしょう？貴方は本当に、新しく何かを買うということをしませんね。それが悪いわけではないですけれど」

ティムは改めてフロウの姿を眺めてみた。宣教師になったときに貰った、とフロウがよく自慢げに言う服はところどころ擦り切れて継ぎをあてられていて、靴もすっかり薄汚れている。読み書きをするときにだけかけている眼鏡に至っては、義眼を入れている左目のほうにはレンズがない。もともと入れていないだけかもしれないが、それでもかなり不恰好に見えるだろう。

「確かに清貧は美徳といいますが、そのような姿では我々の救うべき人々に逆に心配されてしまうのではないでしょうか？」

そう言いながら、ティムはフロウの読みづらく綴りの間違いが多い文章を書き直していく。

「フロウさん、街にお買い物に行ってみてはどうですか？信徒の皆さんが貴方のためにと寄進してくださったお金があるはずです。そのお金で、貴方の欲しいものを買ってみてはどうでしょう」

「でも、フロウは欲しいものなんて思いつかないよ。ご飯は食堂に行けば食べられるし、旅に行くときも保存食をくれるもの。フロウはジゼラ様のくれたこの服が好きだし……」

「商店街に行ってみれば、何か欲しいものが見つかるかもしれませんよ」

フロウは暫く椅子の上で考え込んだ。そうしてぐるぐると頭の中で思いを巡らせたのち、フロウは眼鏡を外した。

「分かった！フロウは買い物に行ってみるよ！その前に、フロウがお買い物をするためのお金を貰ってこないと！」

眼鏡を懐に仕舞い、フロウは早速駆け出していった。

「行ってらっしゃい。このお手紙は、私が出しておきますから、ゆっくり買い物を楽しんでくださいね」

フロウはとてとて駆けていき、大司教様のところへ相談に行った。

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