【募集企画】大聖堂の地下階層【本編】

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地下階層は夜に賑わう。日の光りの差さぬ地下であれ、酒に賭博に生死をかけた決闘に、興じるのはやはり暗がりに静まる夜が良い。

大聖堂は静謐な威厳を漂わせ、夜闇に包まれた。僕の血統は夜目の利く夜型の悪魔であるため、カンテラや燭台は必要がない。
僕はまた地下へと降りて、このエレベーターで繋がっている最下層まで潜っていった。

僕が着いた頃には司教の口上が始まっていた。
身なりの豪華な上流階級が一人の貧相な剣士、哀れな囚人に熱視線を向けていた。客入りは上々。今宵は幾らつぎ込まれたのか。たんとお楽しみ下されば結構だが、大いに賭けに負けて下されば尚のこと良い。

ああ、いや違う。今日はどうやら3度目の決戦のようだ。
2人の罪人を手に掛けた者が、可愛らしいライオンに美味しく頂かれる日。
では、賭けは行われないのか。

勝ち目のない囚人に賭けるのは酔狂な富豪くらいだ。それではこちらの利益にならないだろう。よって、決戦の日には観戦料を徴収する事になっている。

まあ、一瞥するだけでも客入りが上々だという事は確かだ。
僕は第6階層特有の熱気を冷めた目で見渡しながら、なるべく人目につかない上段に位置取りをした。

向こう側には丁度ライオンが待ち構える檻が今にも開かれようとしていて、空腹を満たそうと、ライオンは中をうろうろ歩き回りながらもご馳走から目を離さないでいた。

遠目でも彼の震えが見て取れる。
ああ、これは持って10秒か。

僕は口元に手を当て、笑みを浮かべた。

その時、薄い桃色の髪を束ねたスタッフが、その白く華奢な手で檻を開く。

ライオンは彼女には目もくれず、一目散にご馳走へ駆け寄り、鋭い牙が覗く大口を開けて──

僕はくすくすと一笑する。
随分美味しそうに食べるものだ。
なんて可愛らしいのだろうと細めた目を、囚人にも向ける。

いつだったか、オウィスさんがおっしゃっていた。
死をもって罪が償われ、彼らは神の御許に還られる、と。そう言う彼に僕は話を合わせて肯いた。

しかし僕は、この赤く染まり原型も留めぬ凄惨な終末を遂げた囚人の行く末など、地獄以外にあるはずないと思う。

目も当てられぬ肉片が飛び散る光景。それに歓喜する悪趣味なお客様。

宙にチップが舞った。
硬貨を弾き、価値ある紙幣がひらひらと血溜まりに落ちる。

手を叩き愉悦に浸る客が投げ込む金の上に成る聖水のなんと清らかな事か。

銀製の剣は畜類の肉を引き裂く事なく、返り血で汚れても尚、ぽつんと独りで輝いていた。

子供と仲良くなる方法【アーベル・ケーフィー】→←銀の聖剣【ジゼラ・ヘルファム】

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