気遣い ページ9
「A」
濱田さんが来るのをずっと待っていたら、小瀧くんと話終えたしげが隣の席に座る。
「今日さ、飲みに行かへん？」
「ごめん、今日は用事があって」
そう言えばまた小瀧くんの方を見てる。
「じゃあ、明日は？」
「明日なら空いてるけど」
「よっしゃ。じゃ、明日で」
「うん、分かった」
急にどうしたんだろ。しげからは滅多に飲みに誘ったりしないのに。
「…小瀧、やったで」
「…いやいや、もっと頑張らな」
嬉しそうに話しているしげを小瀧くんが叱ってるように見えて、ひそかに笑っていれば、
「おはようさん」
「あ、濱田さん」
やっと来た濱田さん。
「濱田さん、おはようございます〜」
「おはようございます！」
「朝から元気やな〜」
「おはようございます、企画の確認お願いしてもいいですか？」
「あ、うん。もう出来たん？」
「はい、朝からやってたので」
「朝…淳太もおった？」
確認しながら話す濱田さんは普段は天然だけど、仕事はできる人で。
「はい、いました」
確認を終えて、部長が座る席をじっと眺めた濱田さんは、今度は私を見て笑う。
「淳太今日ここに寄らんでも良かったんやけどな」
「え？」
訳がわからず濱田さんを見つめれば、濱田さんはまた笑って話す。
「そのまま会議室集合やから、この課に来る必要ないのに、わざわざ何で来たんやろな」
これ以上は言わへんよ。そう言って濱田さんはどこかに行ってしまった。
「…え、それって淳太も」
「…知らんかったん？俺は気付いてたけど」
「ねぇ、小瀧くん。さっきのってどういう意味なのかな？」
もう一度聞いても理解できない私に二人は目を見開いて驚いた。
「お前アホちゃう？鈍感にも程があるやろ」
「しげ、そういうとこやって」
「あ、ごめんつい」
はてなマークが浮かんだままの私に優しく小瀧くんが説明する。
「早瀬さんが一人でおるから、わざわざ来てくれたってことです」
「じゃあ、私のせいってこと？」
そう言えばしげが、呆れたように溜め息をついた。
「お前のためってことやろうが。どんな神経しとんねん」
要するに部長が一人でいる私を気遣ってくれたってことなのかな？
「というか、黙って聞いてればさっきから失礼なことばっか言って！」
「だってほんまのことやんけ」
だんだんムカついてきた。思えば私、しげに聞いてないし。小瀧くんに聞いたんだし。
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作者名：七月雪 | 作成日時：2018年3月17日 21時
