早朝出勤 ページ8
「おはようございます」
朝早くから出勤しても、返事が返ってくるのは一人だけ。
「おはよう、早瀬」
そう。部長と私だけしか出勤してないのだ。
「今日は早いんですね」
「会議とかの準備でな」
そういやそんなこと言ってたような。
「早瀬はいつも早いんやな」
部長は会議の日は早く来るけど、取引先のとこまで出向くこともあるから、意外と一人でいることの方が多い。
「はい、余裕をもって行動したいので」
私は特に朝早くからしないといけない仕事はないけど、この時間帯の方が道も空いてるし、いつもやってるおまじないをするのにも、丁度いい時間だから。
「しっかりしてて偉いな」
珍しい。部長もそんな風に笑うんだ。
「はい、偉いんですよ私」
「すぐ乗っかったな」
鞄を置いて、パソコンを立ち上げる。
少し時間があるから、ワードを開いて新しい企画でも考えようかな、なんて。
「じゃ、会議行ってくるわ」
「はい、行ってらっしゃい」
部長忙しそうだなぁ。あんまり休んでるところを見たことない。まあ、部長までだらけ始めたらうちの課は成り立たなくなるし仕方ないんだろうけど。
「おはよう〜」
「おはようございます!」
「お、二人一緒に来たんだ」
しばらく経ってから、しげと小瀧くんが一緒に出勤してて。この一日で随分仲良くなったんだなって。
「秘密の話してたんです!ね、しげ」
「言うなよ、Aには」
「何々、二人で何話してたの?」
「何もないって」
「実はしげが、」
「おまっ、秘密言うたやんか」
いいなぁ。二人で楽しそう。私も誰か女社員がいたらランチとかしてたんだけどな。
「あれ、淳太は?」
「会議に行ったよ、しげは行かなくて平気?」
「あー、俺は企画出しただけやから行かんでもええんよ」
「え、しげの企画通ったん?」
「そうや、凄いやろ」
もうタメ口なんだ。何気にあだなで呼んでるし。
「早瀬さんは企画通ったことありますか?」
「うん。二、三回くらいはあるかな」
「俺は四回通ったことある〜」
「はいはい、それはよかったね」
「だからしげ、それがあかんのやって」
「え、そうなん?」
何だろう。小瀧くんがちらちらとこっちを見てるのはいいんだけど、しげに小声で何か言ってるんだよね。私の悪口だったりするのかな。
「…優しくすればええんよ」
「…わかった」
企画を一通り打ち込んで、後は確認だけ。濱田さん、早く来ないかな。
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作者名:七月雪 | 作成日時:2018年3月17日 21時